ビートルズファンの間で議論になる定番ネタとして、
前期・後期いずれの方が好きか?というのがあります。
永遠に尽きないネタですが、その分かれ目は「Rubber Soul」より前、
それ以降、として良いと私は思っております(これ自体議論のネタですが)。
そして、後期、というより全キャリアを通しての最高傑作と評されるのがこの
「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」
どのアルバムが一番好きか?というのも定番ネタで、必ずしもこれ、
という人ばかりでないでしょうが(私もその一人)、その後のポップミュージックを
劇的に変化させたアルバムであるのは間違いありません。
当初、制作は架空の”ペパー軍曹のロンリーハーツクラブバンド”という
ショー仕立てのストーリーを持った所謂「コンセプトアルバム」として始まりました。
しかしレコード会社の(マネージャーB・エプスタインとの説も有)”レコード早く出せ!
早く売れ!”の圧力によって、「Strawberry Fields Forever」「Penny Lane」を
切り売りされてしまったことにより、特にジョンが、コンセプト云々としての制作意欲を
削がれる結果となりました。ジョンは後に「あのアルバムがコンセプトアルバム
なんて言われるけど、そんなつもりで作った訳ではないんだ。
せいぜいタイトル曲のリプライズがB面最後の方に入っているくらいさ」などと、
インタビューにて、いかにも皮肉屋のジョンらしいコメントを残しています。
よくロックを革命的に変えたと評されますが、その主な”革命性”を簡潔に、
具体的に一つずつ列挙すると(曲名長いので収録順のみ記載)、
◆①テーマから、架空の”ビリー・シアーズ”というシンガーのショー②へと
繋がる、また⑫にてオープニングテーマのリプライズ、そして
レコードジャケットまで含めて一つの作品、というトータル・コンセプト性
◆隠喩的にドラッグについて歌った②③⑤
◆パイプオルガンの演奏を録音した磁気テープをバラバラに切り刻み、
繋ぎ合わせてSE(サウンドエフェクト)的に使用した⑦
◆インド音楽のフレーバー(ラーガロック)を取り入れた⑧
◆異なる2曲を繋ぎ合わせた⑬
その実験性の例として、よく⑦のSEが挙げられますが、
これが本作を傑作たらしめているということではなく、
出来る事は何でも試してみよう、という制作時にみなぎっていた
”機運”をあらわす象徴的出来事として捉えるのが適当でしょう。
しかし後の世に生まれた世代の残念な所は、これらを発売当時の人々程の、
衝撃・感動をもって聴く事が出来にくいのではないか、ということ。なぜなら、
ここで行われたサウンドアプローチ・手法などは、後のミュージシャン達によって、
子引き・孫引きの形で踏襲され、後世のリスナーは本アルバムを聴く以前に、
大抵はどこかでそれを耳にしてしまっているからです。
また⑦のSEなども、後の世、特に80年代以降なら、もっと劇的かつ効果的なSEを
(しかももっと容易に)作り出すことが可能になりました。
しかしながら(映画に全く詳しくないのでが)、初期のディズニー映画やゴジラなどの
特撮物は、そのアニメーション技術・特撮効果といったテクノロジーにおいては、
後世とは比較にならない程チープなものでしょう。しかしそれらや本作は
時代を超えて名作と親しまれています。その理由は、先駆けとなった精神性、
またなにより、そのストーリーや楽曲が優れている、といったテクノロジー云々
以前の要素は勿論の事、そして本作に関しては、質の高さとエンターテインメントが
両立している、という面があります。「内容は高度だけど、玄人にしか受けない」、
「面白いけど売れ線だな」といったものは他にありますが、これが両立しているのは
ロック・ポップスにおいても、あまり多くないのではないかと私は思っています。
ビートルズネタは難しいです。私などはマニアとまでは言えない普通の
一ファンに過ぎないので、客観的事実の誤りは勿論、主観的意見を
述べただけでも、日本に限っても巨万といるビートルズマニア達から、
「それ間違ってるよ!」「何言っとんじゃ、ゴルァ!!」(#゚Д゚)・・・・(((((゚Å゚;)))))
といった事になりかねません。(ウソですw。ビートルズファンにそんな
怖い人達はいません。…………………いないんじゃないかな…………)
本作の音楽的・商業的成功とは相反して、その後、
バンド内における亀裂の深まり、B・エプスタインの死など様々な理由により、
その活動は徐々に終焉へと向かうことになります。