#3 Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band

ビートルズファンの間で議論になる定番ネタとして、前期・後期いずれの方が好きか?というのがあります。永遠に尽きないネタですが、その分かれ目は「Rubber Soul」より前、それ以降、として良いと私は思っております(これ自体議論のネタですが)。そして、後期、というより全キャリアを通しての最高傑作と評されるのがこの「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」どのアルバムが一番好きか?というのも定番ネタで、必ずしもこれ、という人ばかりでないでしょうが(私もその一人)、その後のポップミュージックを劇的に変化させたアルバムであるのは間違いありません。

当初、制作は架空の”ペパー軍曹のロンリーハーツクラブバンド”というショー仕立てのストーリーを持った所謂「コンセプトアルバム」として始まりました。しかしレコード会社の(マネージャーB・エプスタインとの説も有)”レコード早く出せ!早く売れ!”の圧力によって、「Strawberry Fields Forever」「Penny Lane」を切り売りされてしまったことにより、特にジョンが、コンセプト云々としての制作意欲を削がれる結果となりました。ジョンは後に「あのアルバムがコンセプトアルバムなんて言われるけど、そんなつもりで作った訳ではないんだ。せいぜいタイトル曲のリプライズがB面最後の方に入っているくらいさ」などと、インタビューにて、いかにも皮肉屋のジョンらしいコメントを残しています。
よくロックを革命的に変えたと評されますが、その主な”革命性”を簡潔に、具体的に一つずつ列挙すると(曲名長いので収録順のみ記載)、
◆①テーマから、架空の”ビリー・シアーズ”というシンガーのショー②へと繋がる、また⑫にてオープニングテーマのリプライズ、そしてレコードジャケットまで含めて一つの作品、というトータル・コンセプト性
◆隠喩的にドラッグについて歌った②③⑤
◆パイプオルガンの演奏を録音した磁気テープをバラバラに切り刻み、繋ぎ合わせてSE(サウンドエフェクト)的に使用した⑦
◆インド音楽のフレーバー(ラーガロック)を取り入れた⑧
◆異なる2曲を繋ぎ合わせた⑬その実験性の例として、よく⑦のSEが挙げられますが、これが本作を傑作たらしめているということではなく、出来る事は何でも試してみよう、という制作時にみなぎっていた”機運”をあらわす象徴的出来事として捉えるのが適当でしょう。

 

 

 

しかし後の世に生まれた世代の残念な所は、これらを発売当時の人々程の、衝撃・感動をもって聴く事が出来にくいのではないか、ということ。なぜなら、ここで行われたサウンドアプローチ・手法などは、後のミュージシャン達によって、子引き・孫引きの形で踏襲され、後世のリスナーは本アルバムを聴く以前に、大抵はどこかでそれを耳にしてしまっているからです。また⑦のSEなども、後の世、特に80年代以降なら、もっと劇的かつ効果的なSEを(しかももっと容易に)作り出すことが可能になりました。
しかしながら(
映画に全く詳しくないのでが)、初期のディズニー映画やゴジラなどの特撮物は、そのアニメーション技術・特撮効果といったテクノロジーにおいては、後世とは比較にならない程チープなものでしょう。しかしそれらや本作は時代を超えて名作と親しまれています。その理由は、先駆けとなった精神性、またなにより、そのストーリーや楽曲が優れている、といったテクノロジー云々以前の要素は勿論の事、そして本作に関しては、質の高さとエンターテインメントが両立している、という面があります。「内容は高度だけど、玄人にしか受けない」、「面白いけど売れ線だな」といったものは他にありますが、これが両立しているのはロック・ポップスにおいても、あまり多くないのではないかと私は思っています。

ビートルズネタは難しいです。私などはマニアとまでは言えない普通の一ファンに過ぎないので、客観的事実の誤りは勿論、主観的意見を述べただけでも、日本に限っても巨万といるビートルズマニア達から、「それ間違ってるよ!」「何言っとんじゃ、ゴルァ!!」
(#゚Д゚)・・・・(((((゚Å゚;)))))

といった事になりかねません。(ウソですw。ビートルズファンにそんな怖い人達はいません。…………………いないんじゃないかな…………)

本作の音楽的・商業的成功とは相反して、その後、バンド内における亀裂の深まり、B・エプスタインの死など様々な理由により、その活動は徐々に終焉へと向かうことになります。

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