#206 Billy Joel

前回までビリー・ジョエルが83年にリリースしたアルバム「イノセント・マン」について、
というより、いつからやってたんだっけ?(´∀` ) ていうくらいに、長い間ビリーの事を
書き続けてきましたが、今回で終わりです(去年の6月からでした … )。

個人的には「イノセント・マン」でビリー・ジョエルは終わっています。・・・・・・・・・・
あっ、いきなりこんな事書いても、訳がわからない人には通じないし、世のビリーファンを
敵に回す事になるかもしれませんが ………… (#゚Д゚) ナニイッテンダ! ゴルァ・・・・(((((゚Å゚;)))))
あくまで私見ですよ、し・け・ん♡ ☆(ゝω・)v

85年にリリースした、新曲2曲を含む二枚組ベスト盤もバカ売れし、世の中はこの人と
フィル・コリンズと、あと数名のミュージシャンで回っているんではないかと思うくらいに
時代の趨勢を支配してと言えるほどでした。
その後において、オリジナルアルバムとしては「The Bridge」(86年)、
「Storm Front」(89年)、「River of Dreams」(93年)をリリースして、
いずれも大ヒットしたのは間違いないのですが、これが自分的にはまったくピンと
響かなかったのです。
どうしてか?と問われても答えようがありません、そうとしか思えなかったのですから。
これが当時はそう感じたけど、歳取った今聴き直してみたら印象が違った、というのであれば
十代から二十代前半の自分には理解出来なかった。という解釈もあるのですが、
五十歳になった現在でもこの感想は変わりません。
「ザ・ブリッジ」以降のビリーは迷走してしまった、というのが私個人の考えです。
その迷走振りが感じられるものを以下に数曲。

「ザ・ブリッジ」のオープニングナンバーである「Running on Ice」。何かに似ているな?
と思う人がいるかもしれません。そう、ポリス(スティング)です。
「ゴースト・イン・ザ・マシーン」か「シンクロニシティー」にこんな感じの曲が
入ってたんじゃね?と、思えるほどに。

クラプトン(クリーム)か? と思ってしまう「Shades of Grey」は
「リヴァー・オブ・ドリームス」に収録された楽曲。
これ辺りは完全にクリームを狙ったんじゃないかな?と私は思っています。
冒頭のドラムフィルイン、ギターの音色辺りが特に。
でもこの二曲、結構きらいではないんですけどね・・・・・・・

本人曰く創作意欲が尽きてしまったとか、エルトン・ジョンに励まされて
00年代以降一緒にツアーに出るようになった話とかは、いろいろな所で散見出来ますので
そちらをどうぞ(あっ、” 散見 ” 自体があちこちでという意味があるので、これは重複した
表現でした、馬から落ちて落馬、的な・・・・・)。

中学に上がった時から洋楽を聴き始めた際に、大流行りしていた「イノセント・マン」に
魅せられ、85年の二枚組ベストで過去の名曲に触れる事でさらにビリーの虜となった
洋楽ファンは多かったんではないでしょうか。勿論私もその一人です。
40年余りに渡り洋楽に親しんできた中でも、もっとも思入れのあるミュージシャンの
一人について長らく書き連ねてきました。
最後に総括しようかと思いましたが、それだけであと四~五回になってしまいますので
止めておきますが、本当にザックリまとめると、ビリージョエルというミュージシャンは、
バラードシンガーのイメージが強いけれども、実はロックンローラーの側面がかなりあり、
またその歌詞においても、「素顔のままで」の様な甘ったるいラブソングなどは稀有であり、
「イタリアンレストランにて」に代表されるストーリーテラー的なものや、「マイアミ2017」など
悲観的な内容を淡々と、またアイロニカルに描く事を得意とした人でした。

ヒマな人 …… もとい、時間に余裕がある方は#174から本回迄におけるビリー・ジョエル特集に
少しでもお目通し頂ければ幸いです。・・・・・・・・あっ、でも、時間のムダだった!
オレの時間返しやがれ!!(#`Д´)o とか言われても当方では責任を負いかねます。
あくまで自己責任のほど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

#205 Leave a Tender Moment Alone

上はビリー・ジョエルによる83年の大ヒット曲「Uptown Girl」。
あまりにも有名な本曲はフランキー・ヴァリ・アンド・フォー・シーズンズにインスパイアされ創ったもの。
ビリーとヴァリの声質・歌唱スタイルが似ているという訳では決してありませんが、
そのスピリットという点においては間違いなく踏襲しています。

「Careless Talk」はサム・クック、「Christie Lee」はリトル・リチャードと
ジェリー・リー・ルイスといった、R&R黎明期のシンガーへのオマージュ。
ビリーは決して美声ではなく、また声域も広いという訳ではありませんが、
どんなスタイルの音楽でも自分の歌として唄いこなしてしまうという意味では、
卓越したシンガーの一人である事に間違いはありません。

秀逸な曲ばかりの集まりであるアルバム「An Innocent Man」ですが、本作における
ベストトラックは「Uptown Girl」でも「The Longest Time」でもなく、
個人的には本曲ではないかと思っています。
それがB-④に収録された「Leave a Tender Moment Alone」。
スモーキー・ロビンソンをリスペクトした本曲は、” Tender Moment ” というタイトルが
まさしくふさわしい極上の一曲。
全然余談ですが、私は ” 最上のひと時を残して彼女(彼)は去ってしまった ” といった
意味だと思っていました。ジャズスタンダードで有名なマル・ウォルドロンがビリー・ホリデイに
対して創った「left alone」に引っ張られてそう解釈してしまっていたのですが、
意味は全然違っていて、” 女の子といい雰囲気になると、いつもおどけてしまう~そのまま、
甘いひと時をキープしておけよ ” という意味合いになるようです。
好きな娘の前ではついついふざけてしまう、それを自身で戒めた内容の歌詞。
私も耳がイタイ言葉です・・・・・・
しかしながらですね、よほどのイケメンや金持ちでもない限り、世の中の普通の男子は、
笑いを取る事くらいでしか!、女の子の気を引くことが出来ないんですよ!!
( ゚Д ゚#) なっ!みんな!!そうだろ!!!・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・なに力説してんだ。あと男子ってナンだ?オマエ五十だろ (´∀` ) ……

エンディングナンバーである「Keeping the Faith」。本作はビリーが影響を受け、
慣れ親しんだアメリカンミュージックに対して敬意を表した内容でありましたが、
本曲では ” 古いものが必ずしも良いものとは限らない。そして明日はそれほど悪いものでもない ”
という、本作で演った音楽をひっくり返すような事を歌っています。
そして確かな事は ” 信念を貫く!” という、ビリーらしいと言えば、らしいと言える歌です。

以前に「ニューヨーク52番街」のある回では、個人的に「52番街」がビリーのアルバム中で
最も白眉と述べましたが(黄金期の五枚はどれも僅差ですけれども)、聴くときによっては
本作が最高傑作かな?と思う時もあります。
本作は決してただの懐古趣味に終わっている訳ではなく、エンディングナンバーで
歌われている通りに、ベクトルが未来へ向かっている、それが本作を更に高みへと
押し上げているように私は思うのです。

#204 Tell Her About It

80年代前半に所謂 ” モータウンビート ” のちょっとしたリバイバルがあった、という事は
以前にも何回か書きました。
ホール&オーツ「マンイーター」、スティーヴィー・ワンダー「パートタイム・ラヴァー」、
そしてフィル・コリンズによる「恋はあせらず」のカヴァーなどがよく知られています。
さらに言えば、その少し前からイギリス勢の中でもアンテナの鋭いミュージシャン達によって、
このリバイバルは始まっていたと言えます。
デイヴ・エドモンズとニック・ロウを中心とし、アルバム一枚のみを残して解散したロックパイルによる
「ハート」(80年)(#86ご参照)、ポール・ウェラー(#55)率いるザ・ジャムが
解散間際に放った
全英No.1ヒット「悪意という名の街」(82年)などが既にありました。

この曲もそんな所謂 ” モータウンビートリバイバル ” の真っただ中にリリースされ、見事に全米No.1と
なりました。言わずと知れたビリー・ジョエルによる「Tell Her About It」(83年)。
「あの娘にアタック」という邦題から、恋するあの娘へ告白するんだ!くらいの内容かと長い間
思っていましたが、実は語り部は第三者であり、しかも当の男女は既にステディな関係である。
” 彼女へ(ちゃんと)伝えなよ ” という、自分は過去にそれで過ちを犯したので、その教訓から、
オマエは付き合っている彼女へ大事な事をきちんと話せよ、というアドバイスをするものです。
邦題の付け方ももう少し考えてもらいたいものでした・・・・・
PVは言うまでもなく、エド・サリヴァンショーを模したもので、エドはそっくりさん。
ビリーは B.J. and the Affordables(お手頃価格なバンド)として登場し、後に控える
大物コメディアンの為に場を ” あっためる ” 役割だったのですが、完全に場を食ってしまった形で、
スタジオ以外でも視聴者たちや、なぜかソ連の宇宙飛行士までもノリノリとなります。
ちなみに大物コメディアンは踊る熊と絡む、という設定で、はたしてその後は?……… というオチ。