#253 Jeff Beck_5

前回第一期ジェフ・ベック・グループから時系列を飛ばしてベック・ボガート & アピスへ話を及ばせたのはこれを集中的に取り上げるため、そう所謂第二期ジェフ・ベック・グループです。

今年に入ってからジェフ・ベックを取り上げ続けていますが、本バンドはジェフのみならず他のメンバーによるプレイも、何よりアルバムのクオリティー自体が傑出しています(惜しくも二枚だけ)。

前作「Beck-Ola」(69年)の黒っぽいフィーリングを更に推し進めてR&B、ソウル、ファンク、ゴスペルと、この頃のジェフによるブラックミュージックへの傾倒ぶりが伺えます。

オープニングナンバー「Got the Feeling」。本作を象徴する様な楽曲でありベストトラックであると思います。コージー・パウエルによるドラムのイントロは技術的に決して高度なものではないのですが、このフィーリングと音色はコージーならではもの。ヴァースの単純な繰り返しがサビにおける解放感をより際立たせており、そしてサビ終盤でのドラマティックな展開(転調かな?)は何百回と聴いていますが見事としか言いようがありません。
A-②「Situation」はイントロだけ聴くとアイク&ティナ・ターナー?と思ってしまう程のソウルテイスト。ヴォーカル ボビー・テンチ(昔はボブ・テンチと表記されていましたね)の参加が本バンドへ寄与したものは計り知れません。もっともそれは他の全員に言える事ですが …
A-④「Max’s Tune」はキーボード マックス・ミドルトンによる楽曲。ミドルトンについてはその後のジェフにおける有名なインストゥルメンタル作品群でも関わる事になりますのでおいおい触れていきます。生ピアノとフェンダーローズによるプレイが素晴らしい。また本曲におけるコージーのドラムはあまり取り上げられませんが、私は彼の違った一面が垣間見えて好きです。とかくツーバスプレイやそのベースドラムの巨大さ(26インチ)などばかりが取りざたされますが、この様なリリカルなドラミングもあるのです。パーカッション的なタムタムのプレイはピンクフロイドのニック・メイスンを彷彿させ、そのシンバルの長い減衰はまるで靄の中で演奏しているような印象を与えます。ちなみに当初の米国盤では「Raynes Park Blues」というタイトルだったそうですが、レインズ・パークとはロンドン郊外のテニスで有名なウィンブルドンの近くとの事。霧の町ロンドンをイメージしたのならまさしくその通り。まあ …
ロンドン … 行ったことないんですけどね・・・

B面は3曲収録。B-②「New Ways / Train Train」が本作におけるハイライトとなっており、ライブでも同様だったそうです。中盤のジェフとコージーの掛け合いが聴きどころであり、まるで侍の一騎打ちの様相です。二人とも英国人ですけどね …
ジェフはドラマーを選ぶセンスが優れていると昔から評されていました。「Blow by Blow」以降はジャズフュージョン畑の超絶テクニックのプレイヤー達とプレイする訳ですが、私はジェフと最も相性が良かったのはコージーだったのでないかと思ってます。コージーはジャズ系のドラマーと比べれば技術的には劣る訳ですが、ワンアンドオンリーのフレーズセンス、音色、そしてグルーヴを有しており、ボンゾと並んで最高のロックドラマーの一人だったと考えています。エンディングのチョーキング一発はジェフの十八番。シンプルでもこれがたまらない・・・・・

激しい果し合いの様な前曲から一気にクールダウンしたエンディングナンバーが「Jody」。と言っても中盤にはフックがありただのバラードでは終わらせません。クライヴ・チャーマンのベースが全編に渡り印象的であり素晴らしい効果をもたらしています。終盤をキーボードソロで締めるアレンジは「Blow by Blow」まで聴くことが出来ます。ジェフがミドルトンを音楽的パートナーとして信頼していた証でしょうか。

前作に引き続き全編においてフェンダー ストラトキャスターが使用されています。レスポールとどちらが好みかは人それぞれですが、相対的にトーンの変化を付ける事に秀でているのはストラトの方かと。なのである時期からジェフはストラトオンリーになったのかもしれません(勿論レスポールのプレイも個人的には好きです)。エフェクター類もファズ、ワウワウ、フェイザー(この頃あったのかな?無ければレスリースピーカー)などおなじみの機材を使用し、ピックアップポジションや言うまでもなくピッキングによるニュアンスの付け方によってまさしくジェフ’sワールドが展開されています。あっ!スライドも多用していますね。ジェフが初期からスライドを結構好んでいたのは既述の事。
その後において一般的に認知されるジェフベックスタイルは本作にてまず確立されたのではないかと思っています。初回に言及した事ですが、シチュエーション毎に最適なトーンを選び出す能力は全ギタリストの中でジェフが最も秀でていたと私は考えています。
本作にあえて苦言を呈するとしたら音質の悪さでしょうか?もう少しクリアな音で聴くことが出来たら …
まっ、それも本作の味わいの一つと思えば良い事ですかね。