#19 Close to the Edge

ピンク・フロイド「Echoes」、キング・クリムゾン「Lizard」、ジェネシス
「Supper’s Ready 」、キャメル「The Snow Goose」。今、思いつく限り挙げて
みましたが、これらの共通点がすぐにわかってしまった人は、かなり重症のオールド洋楽
シンドロームにかかっています。対処法としては、このブログを定期的に読むことです。
それしか治療法はありません(たまにでいいから読んで下さい、おながいします… (´;ω;`))
その共通点とはLP時に、片面全てを使って一曲(「The Snow Goose」はAB面通して)
という、とんでもない楽曲構成ということ。今こんなことをやったら頭おかしいの?
と思われることでしょうが、70年代はこれが許されてしまったのです。そして、
お分かりの人は”一つ大事なのが抜けとるぞ!ゴルァ!!(#゚Д゚)” とすぐにお気づきに
なられるでしょう。そうです、今回のテーマ、72年発表イエスの代表作にて最高傑作と
評される「Close to the Edge(危機 )」そのタイトル曲です。

前作「こわれもの」のヒットにて、世界にその名が知られ、米国アトランティックからも
ようやく認められた彼らでしたが、バンド内の不和はかなり深刻な状態でした。なかでも
ビル・ブラッフォード(ds)とジョン・アンダーソン(vo)の関係はかなり険悪で、
アンダーソンが度を過ぎて”きっちり・かっちり”とした構成を求める為に出口が見えない程、
レコーディングしては修正、またレコーディングしては修正、という無限ループの様な状況。
また難解な文学的歌詞の志向に、ブラッフォードはウンザリしていたそうです。彼は
ジャズにそのルーツを持つ人なので、もっとフリーにプレイしたい、といった願望が
ありました。以前からキング・クリムゾンの音楽性に魅かれ、ロバート・フリップと接点を
もっていた彼は、結果的にアルバム発表後のツアー中に脱退して、クリムゾンへ加入しました。
しかし、そのブラッフォードをもってしても、完成した本曲を聴いた時には、その出来栄えの
素晴らしさに感嘆したそうです。

19分近くに及ぶ本曲は、とにかく聴いてみてもらうしかありません。今回は細かく
楽曲の構成を四の五の言わないようにします。ただ”聴きどころ”だけを三点挙げると、
①SE的イントロを経て、00:57秒頃に始まるテンション感溢れる動的アンサンブル
②08:30~14:15秒頃までの静的パートにおける、終盤盛り上げりのパイプオルガンと
シンセの音色、その後に続く上記①を更にテンションアップした動的パート
③16:32秒辺りのエンディングへと向かう展開
勿論この箇所だけを抜き出して聴いても意味はありません。YouTubeで聴けますので
(お金に余裕のある人は、上のアマゾンリンクから買ってください)、人生における
たった20分弱の時間です、騙されたと思ってこの曲に耳を傾けてみて下さい。

ブラッフォード脱退に伴い、新メンバーとしてアラン・ホワイトが加入。ブラッフォードより
シンプルで、ロックフィーリングに溢れたそのドラミングはイエスに新たなエッセンスを
もたらしました。その後リック・ウェイクマンも脱退し、70年代も人事的に安定しないのは
相変わらずでした。遂には中心メンバーであるアンダーソンですら一時バンドを離れます。
バグルスのトレヴァー・ホーン (vo)、ジェフ・ダウンズ(key)が参加(というより
イエスとバグルスの”合併”と言った方が正確かも)してバンドは何とか存続の道を探ります。
83年発表の「90125(ロンリー・ハート)」からのシングル「ロンリー・ハート」が、
全米NO1ヒットとなったのは前回で触れた通り。その後一時期、スクワイアを除く黄金期の
メンバーとそれ以外のメンバーで、イエスが分裂した時期もありました。
08年にアンダーソンが完全に脱退。15年には創設メンバーであったクリス・スクワイアが
死去(享年67歳)。その後は別活動を行っていたアンダーソンと「イエス」ではない名義で
合併し、実質上の「イエス」として、流動的ではありますが、今日でも彼らの音楽は連綿と
そのDNAを紡いでいます。

ピンク・フロイドがロジャー・ウォータース、キング・クリムゾンがロバート・フリップの、
その強烈・強力な音楽的個性及びリーダーシップによって成り立っていたのに対し、イエスは
先に述べた様に(良くも悪くも)民主的なバンドだったのでしょう。強いて言えば、
中心的役割を担ったのは創設メンバーであった、アンダーソンとスクワイアと言える
でしょうが、それとて絶対的なものではなく、実際に一貫して在籍し続けたメンバーは一人も
いない(分裂期を考慮しなければスクワイアは唯一亡くなるまで居たとも言えますが)という
事実を鑑みても、”イエスはこの人ありき”といったバンドではなかったと思いますが、しかし
(80年代初頭はかなり薄れましたが)その血統・DNAの様なものは50年近く受け継がれて
いるといって良いでしょう。ロックシーンにおいて、かなり珍しい存続のあり方を辿ってきた
バンドだったのではないかと思います。
これにてイエス編は終了です。次回はどのバンド、それともミュージシャン?・・・

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