#75 She’s the Boss

前回、記事を書き終えようとした辺りで見知らぬ訪問者がやって来たのですが、その後気づくと
布団の上で寝ており、それらの前後の記憶が曖昧になっています… 気のせいですよね・・・

前の記事の最後でミック・ジャガーとデヴィッド・ボウイのデュエットについて取り上げましたが、
同年にミックは自身初のソロアルバムをリリースしています、それが「She’s the Boss」(85年)です。
天下のミック・ジャガーの初ソロアルバムという事で当時はかなり話題になったと記憶しています。
さすがレコーディングの面子がもの凄い。ギターにジェフ・ベック、ピート・タウンゼント、ナイル・
ロジャーズ他。ベース バーナード・エドワーズ、ビル・ラズウェル他。ドラム スティーヴ・フェローン、
トニー・トンプソン他。パーカッションには英国を代表するパーカッショニスト レイ・クーパー。
そして何とピアノ・キーボードにはジャズフュージョン界から大御所 ハービー・ハンコックと
ヤン・ハマー(ジェフ・ベック回#6ご参照)その他。これだけ贅沢な布陣を揃えられたのは、
当時において他にはボブ・ディランかポール・マッカートニーくらいしか考えられません。

オープニングナンバー「Lonely at the Top」。とっぱじめからかっとんだロック・チューンに痺れます。
リードギターはジェフ・ベック。問答無用のジェフ節といったフレーズ・音色が炸裂します。ロック界で
ジェフより速く、複雑、かつ正確に弾けるギタリストは大勢います(失礼を承知で <(_ _)>)。
しかしその音を聴いただけで”あっ!!これってジェフ・ベックじゃね?!”の様に思わせることが出来る
プレイヤーはそう多く無いのではないでしょうか。ストーンズファンとジェフ・ベックファンには既出の事
でしょうが、ジェフは74年のミック・テイラー脱退時にストーンズへ誘われています。しかし当時のジェフはフュージョン的音楽を目指しておりその時は袂を分かちました。(しつこですがジェフ・ベック回#5~7
ご参照の事、
お願いです…ちょっとでイイですから読んでください……… オネガイシマス… 。゜:(つд⊂):゜。遂に泣き落としか・・・)私見ですがジェフはこの時加入しなくて良かったと思います。多分すぐ喧嘩別れ
していたのが目に見える様ですので・・・ 実は本曲はストーンズのために作られた楽曲、なのでミックと
キース・リチャーズの共作名義。参考までにストーンズによるデモヴァージョンを、だいぶ印象が違います。

本作は全英6位・全米13位のチャートアクションを記録し、プラチナディスクを獲得。1stシングル
「Just Another Night」は全米12位のヒットとなりました。

プロデュースはビル・ラズウェルとナイル・ロジャーズ。ハービー・ハンコックが参加した事もあってか、
エレクトリックファンク、つまり後に言うヒップホップ色が強いと感じる向きもある様ですが、個人的には
さほどそれは気にならないです。この時代は皆こぞってこの手のサウンドを取り入れていたので、
本作だけ突出してヒップホップ然としている訳ではないと思います。ただ昔ながらのストーンズファンは
どうしても”ストーンズらしさ”を求めてしまったのでギャップを感じた人も少なくなかったのでしょう。
2ndシングル「Lucky in Love」は、エレクトリックファンクとミック・ジャガーらしさが見事に
融合した楽曲だと思います。もっともミックが歌えば何でもミックの音楽になってしまうのですが。
こういうシンガーはポピュラーミュージック界でも数える程しかいないような気がします。

キースはミックがソロアルバムを出す事を快く思っていなかったそうです。ストーンズの活動を第一義に
優先させるべき、と考えているキースにとってはミックの活動がそうは映らなかった様です。
ミックはその後現在まで4枚のソロアルバムを発表していますが、本作が最も好セールスを上げた
作品となっています。レコーディング時は41歳、シンガーとして最も脂の乗っていた時期に収録された、
一人の”シンガー ミック・ジャガー”を知る上では格好の一枚ではないかと思います。

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