#127 Roberta Flack

前回までのディオンヌ・ワーウィック回でもその名があがりましたが、ディオンヌと同世代の
黒人女性シンガーの中で、ロバータ・フラックは絶対に外せない人です。
アレサ・フランクリンは圧倒的なまでにパワフルでソウルフルであり、ディオンヌは
アレサと比べればソフィスティケートされ、良い意味での白人志向とも呼べるスタイルでした。
そしてロバータは、パワフルな歌を持ち合わせながら、非常にアカデミックでもあり、
どんな楽曲を取り上げてもロバータ・フラックの世界に染め上げてしまうシンガーでした。

上の「The First Time Ever I Saw Your Face(愛は面影の中に)」と同曲が収録された
デビューアルバム「First Take」(69年)は、彼女のディスコグラフィーを参考にする限りでは
どちらも全米1位を記録しています。デビュー作とそこからのシングルがいきなりNo.1ヒットと
なるとは初めから順風満帆のキャリアであったと思ってしまいますが、よく見るとそのチャート
アクションは72年においてとなっています。数年かけてじわじわとヒットする作品は決して
他に無い訳ではありませんが、ロバータの場合はどうであったのでしょうか。

ロバータの出自や音楽的バックボーンなどは追い追い触れていきますが、デビューのきっかけは
ワシントンのレストランやナイトクラブで演奏している彼女を観たある人物が、アトランティック
レコードのオーディションをセッティングしてあげた事でした。
69年初頭、伝えられるところによるとわずか10時間でデビュー作のレコーディングを終えたと
されています。ロバータ曰くそのセッションは ”とても素朴かつ美しいアプローチ” であったとの事。
「First Take」は全くコマーシャリズムとはかけ離れていると言って良いほどに、質が高くて
濃密な音楽性を持った作品です。ジャズ・R&B・フォーク・ゴスペル・ラテン等、様々なジャンルの
ごった煮の様なアルバムですが、全てがロバータ色に染まっており、とても新人のデビュー作とは
思えない程に、神々しいほどの傑作です。あまりに神々し過ぎて気楽に聴くのが憚られるほどです
(これって褒め言葉かな?・・・・・)。ちなみに本作ではロン・カーターが参加しています。

ロバータは自身で曲を書く事は極めて少ないです。その代わりに先述の通りどんな楽曲でも
自分のカラーに染め上げることが出来るミュージシャンです。上は2ndアルバム「Chapter Two」の
オープニングナンバー「Reverend Lee」。黒っぽさがプンプン匂い立つナンバーです。

フィフス・ディメンション「ビートでジャンプ」などで知られるジミー・ウェップ作の
「Do What You Gotta Do」。ロバータよりもさらに先達である黒人女性シンガー ニーナ・シモン達に
よってレコーディングされていたナンバー。タイトルは ”やるっきゃないよ” の様な意だそうです。

B面のオープニング「Gone Away」。ダニー・ハサウェイやカーティス・メイフィールドといった
当時におけるニューソウルの旗手達による名曲です。ギターはエリック・ゲイル。ジャズ・フュージョン、
AORからポップスまで、ありとあらゆるジャンルを弾きこなす達人ですが、その根っこにはブルースが
あるのが本曲のプレイでありありとわかります。

ミュージカルで有名な「The impossible dream(見果てぬ夢)」。ロバータ色に染められたとしか
言いようが無いアレンジであり、ただただ素晴らしいの一言。

今回は「愛は面影の中に」が世に認められる辺りまで書こうかと思っていたのですが、ムリそうです …
次回は3rdアルバムの発売から、ロバータがブレイクする時期くらい迄でしょうか?
予め言っときます、スティーヴィー・ワンダーは10回に渡りましたが、ロバータもかなり
長くなりそうです。忙しい人はちゃっちゃと読み飛ばして頂いても結構です・・・・・・
でも少しは読んで欲しいかな  … ・・・・・・・ |ω・`)チラ

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