BS-TBSで放送されている「SONG TO SOUL」にて「Just the Way You Are」が取り上げられていました。もう十数年前のことですが・・・内容はうろ覚えですが、プロデューサーであるフィル・ラモーンが出演し、その制作過程について語っていた記憶があります。
覚えているのがドラムトラックについて。始めは普通の16ビート、口で言うと、
チチチチタチチチ・チチチチタチチチ
といったリズムだったのですが、たしかラモーンの提案により普通じゃない、アクセントをずらしたラテンフィールになったというコメントがありました。これも口で言うと
チチチチタチチチ・チチチタチチデン
という、我々が本曲で耳にしているドラミングです。ラテンと言ってもそんなにリズミックなものではなく、ほんの少しアクセントがずれただけ、4拍目のスネアが一つ前の3拍目最後の16分に移動し、4拍目裏にタムタムが鳴る事であの独特のグルーヴを醸し出しています。何てことのない差異に思えますが、普通の16ビート(2・4拍にスネアがあるやつ)ではだいぶ違った印象であったでしょう。前回までに述べた本曲を決定している要素、メロディ・歌・エレピ・声のウォールオブサウンド、そしてフィル・ウッズによるサックスの名演といったものほどではありませんが、目立たないけれども工夫されたアレンジの一つです。
本曲にもカヴァーヴァージョンが数多く存在しますが、「New York State of Mind」のようにスタンダードナンバーとなるほど様々なヴァリエーションは無いと言えます。名曲が必ずしもスタンダードになるとは限りません。私見ですが、本曲には先述した通り多くの要素が詰め込まれており、しかしながらそれらは過剰なアレンジとして嫌味に聴こえる事がなく、すべてが調和され本曲として完成されているからではないでしょうか。
キーボードもしくはギター一本で歌っても取りあえずは良いものに仕上がります、素材が極上ですから。しかし、自分なりの解釈で本曲を料理しようとすると、これが大変な難曲だと気づかされるのでしょう。あまりに完成され過ぎている事、それによってどうしても原曲の呪縛に縛られてしまう、といった要因が難壁として立ちはだかり、それに挑むのがあまりにもハードなのです。そのカヴァーにおいて私が白眉と思うのがこれ。バリー・ホワイトが翌78年にリリースしたもの。仮にミュージシャンないしはアレンジャーが本曲のメロディを与えられたとしたならば、ピアノでシンプルに弾き語りで演るか、あるいはバリーの様なアレンジになるのではないでしょうか。私以上の世代(50歳~)ならキャセイパシフィック航空のテレビCMで一度は耳にしたことがある「愛のテーマ」でおなじみのバリー・ホワイト。ゴージャスなアレンジに彩られたそのバリーによるソウルミュージックマジックによって(彼の歌声も含めて)、ひょっとしたらこういうヴァージョンもあったかも? という我々の思いを満たしてくれます。
本曲の大ヒットによってその後ビリーが破竹の勢いでスターダムを駆け上がるのは周知の事実です。全米3位・全英19位、翌78年にはゴールドディスクを獲得し(余談ですが、40年後の18年にプラチナに認定されています。四十周年記念盤でも出たのでしょうか?)、79年のグラミー賞では最優秀レコード賞及び最優秀楽曲賞を受賞しました。
この曲も一回では終わらず結局三回に渡ってしまいました。名曲が必ずしも時間をかけて録られるとは限りませんが(ファーストテイクであっという間に終わったというのもあります)、10ccの「I’m Not in Love」同様に、よく練り込まれたポップミュージックとはその裏にクリエイター達の頭が下がるような努力が込められているものなのです。三回で折に触れ述べてきたように、本曲はビリー一人では完成し得なかったものです(何しろ最初はボツにしようとしたほど、というのは先述の通り)。フィル・ラモーンとのタッグによって結晶化された珠玉の名曲であり、この二人のタッグはその後も続き、ビリーを最も成功したミュージシャンの一人へと伸し上げる事となります。
最後にライヴの模様を。ビリーによる本曲のライヴ動画は数多く上がっていますがその中から二つ。一つ目は鉄板のやつ。昔からよく観る事が出来た映像ですが、77年というだけで詳しい情報がありません。オフィシャルビデオと銘打っていますが、おそらくTVショーの模様でそれをプロモーション用に使ったのではないでしょうか。想像ですがヒットする直前であり、であるのでサックス奏者も原曲に縛られず自由なプレイをしているのでは?ちなみに翌78年にイギリスの有名な音楽TVショー「Old Grey Whistle Test」に出演した際の動画も上がっていますが、そちらではほぼ原曲通りのサックスソロです。二つ目は82年12月、故郷ロングアイランドで行われたコンサートから。78年と比べて王者の余裕の様なものが感じられます。動画説明には ” In 1983 ” とありますが、映像がVHS及びLDでパッケージ化されたのが翌83年なのでそれと混同したのでしょう。
(細かいですね・・・興味の無い人からすれば ” しらんがな!!” と言われて終わりですね ……… )