『屋根裏部屋の曲たち』。アルバムジャケットでも表している通りに銘打たれたビリー・ジョエル
81年リリースのライヴアルバムは、30秒にも渡る印象的なエフェクト音にて幕を開けます。
「ニューヨーク物語」(76年)のエンディングナンバーである本曲は、その快活な曲調とは
裏腹に近未来ディストピアSF的な内容であるのは#181で既述の事。
突っ走り気味なリバティ・デヴィートのドラムが素晴らしい、彼はこれでイイのです。
そのタイトルが物語る通り、本作はストレンジャーで大ブレイクする以前の楽曲で構成されており、
全てが80年6~7月における「グラスハウス」ツアーによるもの。当然「素顔のままで」「マイライフ」と
いったヒット曲もセットリストに入っていたわけなのですが、あえてそれらを一切収録せず、
最初のヒット曲「ピアノマン」さえ入れないという徹底振り。陽の目を見なかった作品たちに
スポットライトを当ててあげたいという気持ちも勿論あったのでしょうが、それだけではない
意地の様なビリーの意図も汲み取れないではありません。
上は「ストリートライフ・セレナーデ」(74年)中の「Los Angelenos」。
実際に頑なまでヒット曲を収録しなかったのはビリーのコロムビアへ対する反抗心であった様です。
時代の寵児となったビリーに対し、「グラスハウス」ツアーの終了後すぐに新作へ取り掛かるよう
ビリーへ要望しますが、彼はなかなかその気になれない。人気絶頂の内に少しでも売りたい、
間隔を空けて世間の興味が薄れるのを嫌がったレコード会社が、ではライヴ盤を出そう、
とビリーに持ち掛けて、ビリーも渋々同意した、というのが実情だったそうです。
それでもコロムビアの言いなりになるのが癪だったビリーが持ち出した折衷案がヒット曲を
一切に入れないというものだったようです。
それでも天下のビリー・ジョエル。本作は全米8位という大ヒットを記録します。
まだベスト盤が出ていなかった当時においては、「ストレンジャー」より前の曲を
本作で初めて知り、改めてビリーのファンになったというリスナーも少なくなかったとか。
好循環で回っている時は何をやってもうまくいきます。
#174で既述のデビュー作「She’s Got a Way」と「Say Goodbye to Hollywood」が
本ライヴ盤からシングルカットされ、これまたヒットします。
世界はビリーを中心に回っているのではないかと思えるほどの成功振りですが、
はたしてこの後は・・・・・