社会学の分野において、欲求5段階説というものがあるそうです。
飢える事無く雨風しのげる住まいや生活用品を確保するという根源的な欲求から始まり、
家族・会社・地域社会といった仲間とのつながり(所属)及び愛(勿論性欲も含む)を
求めるようになり、やがてはさらに他社から認められたい(承認・尊厳)という欲求へと
発展していきます。
承認の欲求が最終段階化と思いきや、この学説ではさらに上のステージがあり、
それは自己実現の欲求だそうです。つまりこの段階になると他人の評価などは関係なくなり、
自分自身が満足できるか否かという欲求になります。
富も名声も得た人間が突然出家するなど、精神的満足を得る行動に移る事があるのはこれでしょう。
ビリー・ジョエルはプロデビューの当初はホームレス生活を経験するほどの困窮ぶりでした。
やがて「ピアノマン」のヒットによりミュージシャンとして生活は出来るようになり、
そして「ストレンジャー」の大ヒット以降は誰からも認められるメインストリームの大スターと
なりました。そんなビリーがやげて自己実現の欲求を満たそうとしたのは。上の学説からすると
当然の帰結なのかもしれません。
上は82年のアルバム「The Nylon Curtain」におけるオープニング曲でありシングルカットされた
「Allentown」。鉄鋼の街であるアレンタウン。かつては栄えたもののやがて製鉄業の衰退と共に
活気を失い、そこで暮らす若者たちはなかなか職にありつけない様な状況にある。
街を出ていく若者、あるいは葛藤を抱えながら残る者と、淡々とした曲調の上でリアリティあふれる
社会的問題が歌われます。
「The Nylon Curtain」の発売前後、ビリーに様々な問題が降りかかります。
その辺りは次回以降にて。