#202 An Innocent Man

『心機一転』を辞書で引くと ” ある事をきっかけとして新たな気持ちや態度で事に臨むこと ” とあります。
当然この ” ある事 ” が必ずしも良い出来事とは限りません。近しい者の死、失業、そして勿論離婚など …

最初の妻であるエリザベスとの離婚直後に制作されたアルバム「An Innocent Man」(83年)。
「ストレンジャー」による大ブレイク後としては初めての独身状態となり、一流モデルたちとデートを
したりして(ヤルことはちゃんとヤッている)、ビリー曰く ” もう一度ティーンエージャーの気持ちに
戻った様だった ” と語っています。
それらが影響したのか、「An Innocent Man」は彼が十代の頃に影響をうけた音楽に対して
敬意を表した内容となりました。
上はオープニングナンバーである「Easy Money」。一聴瞭然ですが、実際にジェームス・ブラウンと
ウィルソン・ピケットへのオマージュと記されています。
これほどまでにソウルフルなビリーはそれまでに聴く事はありませんでしたので、それまでのリスナーは
あっけにとられたことでしょう。
私はリアルタイムで丁度この頃から洋楽を聴き始めたのですが、何が黒人音楽とか、白人テイストだとか
あまりよくわからなかったので、当時は何気なく聴いていましたけれども・・・・・

ビリーは後に、多分六週間以内で全ての素材を書き上げたんじゃないか、と語っています。
これだけの傑作群をそのような短期間で創ることが出来たとは驚きですが、出来る時はそのような
ものなのでしょう。
タイトル曲はドリフターズそしてベン・E・キングへ捧げたものであり、過去につらい思いをして
恋する心を閉ざした女性に対して、恋する事そして人を信じる気持ちを取り戻させてみせる、
という男性の歌。どちらかと言えばビリーがエリザベス(一家)からかなりひどい事をされたのですが
(後に裁判沙汰となる程の)、ひょっとして男女の立場を入れ替えて暗喩的に創ったのかも・・・・・

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