上はビリー・ジョエルによる83年の大ヒット曲「Uptown Girl」。
あまりにも有名な本曲はフランキー・ヴァリ・アンド・フォー・シーズンズにインスパイアされ創ったもの。
ビリーとヴァリの声質・歌唱スタイルが似ているという訳では決してありませんが、
そのスピリットという点においては間違いなく踏襲しています。
「Careless Talk」はサム・クック、「Christie Lee」はリトル・リチャードと
ジェリー・リー・ルイスといった、R&R黎明期のシンガーへのオマージュ。
ビリーは決して美声ではなく、また声域も広いという訳ではありませんが、
どんなスタイルの音楽でも自分の歌として唄いこなしてしまうという意味では、
卓越したシンガーの一人である事に間違いはありません。
秀逸な曲ばかりの集まりであるアルバム「An Innocent Man」ですが、本作における
ベストトラックは「Uptown Girl」でも「The Longest Time」でもなく、
個人的には本曲ではないかと思っています。
それがB-④に収録された「Leave a Tender Moment Alone」。
スモーキー・ロビンソンをリスペクトした本曲は、” Tender Moment ” というタイトルが
まさしくふさわしい極上の一曲。
全然余談ですが、私は ” 最上のひと時を残して彼女(彼)は去ってしまった ” といった
意味だと思っていました。ジャズスタンダードで有名なマル・ウォルドロンがビリー・ホリデイに
対して創った「left alone」に引っ張られてそう解釈してしまっていたのですが、
意味は全然違っていて、” 女の子といい雰囲気になると、いつもおどけてしまう~そのまま、
甘いひと時をキープしておけよ ” という意味合いになるようです。
好きな娘の前ではついついふざけてしまう、それを自身で戒めた内容の歌詞。
私も耳がイタイ言葉です・・・・・・
しかしながらですね、よほどのイケメンや金持ちでもない限り、世の中の普通の男子は、
笑いを取る事くらいでしか!、女の子の気を引くことが出来ないんですよ!!
( ゚Д ゚#) なっ!みんな!!そうだろ!!!・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・なに力説してんだ。あと男子ってナンだ?オマエ五十だろ (´∀` ) ……
エンディングナンバーである「Keeping the Faith」。本作はビリーが影響を受け、
慣れ親しんだアメリカンミュージックに対して敬意を表した内容でありましたが、
本曲では ” 古いものが必ずしも良いものとは限らない。そして明日はそれほど悪いものでもない ”
という、本作で演った音楽をひっくり返すような事を歌っています。
そして確かな事は ” 信念を貫く!” という、ビリーらしいと言えば、らしいと言える歌です。
以前に「ニューヨーク52番街」のある回では、個人的に「52番街」がビリーのアルバム中で
最も白眉と述べましたが(黄金期の五枚はどれも僅差ですけれども)、聴くときによっては
本作が最高傑作かな?と思う時もあります。
本作は決してただの懐古趣味に終わっている訳ではなく、エンディングナンバーで
歌われている通りに、ベクトルが未来へ向かっている、それが本作を更に高みへと
押し上げているように私は思うのです。