#214 Friends

エルトン・ジョンの成功への軌跡は時系列がややこしいです。これまで何回かに渡って
書いてきましたが、アルバム「Elton John」以降の流れをここで一度整理してみます。
・70年 4月 2ndアルバム「Elton John」リリース(3rdも本作発売前には録り終えている)
・70年 8月 米プロモーションツアーにおけるL.A. 公演で注目を浴びる
・70年 9月 サウンドトラック「Friends」をレコーディング
・70年10月 3rdアルバム「Tumbleweed Connection」リリース
・70年10月 米ツアーの好評を受け「Your Song」をシングルカット
・70年11月 N.Y. でライヴアルバム「17-11-70」を収録
・71年 1月 前年末からチャートを駆け上がってきた「Your Song」が米8位/英7位の最高位に
だいたいこの様な流れですが、さて問題です。この中で今まで触れていない事柄が一つあります。
それはどれでしょう?正解した方には「時間の無駄」というものが与えられますよ (´・ω・`)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だったらやらせんな (´∀` ) ……

エルトン・ジョンの三作目となるオリジナルアルバムは映画「フレンズ~ポールとミシェル」の
サウンドトラックとして制作されました。
多忙の中をぬって創られた本作は、作詞家 バーニー・トーピンは映画の脚本を斜め読みしただけで
歌詞を書かされ、また録音環境も悪かったらしく、当のエルトンは本作を気に入っていないとの事。
本作が彼の70年代におけるその他名盤群と同列に並ぶクオリティーだとは私も思いません。
しかし悪く言えば ” やっつけ仕事 ” となってしまった状況においてさえ、これだけの素晴らしい
楽曲を創れてしまうという事が、いかにこの時期の創作力が凄まじかったかを裏返して証明しているのです。
上はタイトルトラックである「Friends」。「Your Song」ほどではありませんでしたが、
全米34位のスマッシュヒットとなります。ちなみに英では全く売れなかったとか。

何回か書きましたけれども、私は筋金入りの映画オンチです。当然本映画も観ていません ( ・`ω・´)キリッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・威張るな …………… (´∀` )
「小さな恋のメロディ」続編の様な扱いをされていたらしいですが(勿論観た事はありません)、
内容は結構エグイものだったとか・・・
上はA-②「Honey Roll」とA-⑥「Can I Put You On」。後者は「17-11-70」にて
既に披露されていました。

サントラという性質上、インストゥルメンタルのパートが多くなっています。丸々インストの
曲あるいは歌のパートが通常より少ないものなど。上はそんな一曲A-④「Seasons」。

先述の通り、やっつけ仕事であったために本来は3rdアルバムに収録するつもりだった楽曲も
使用したそうです。また映画にそぐわないからとボツになったトラックもあったり、
これも既述ですが録音時の悪条件などがあってエルトン自身は気に入っておらず、
廃盤となって以降単独CD化はされませんでした。90年代になってからアルバム未収録曲集に
ようやく本作の曲たちは収録され、久方ぶりに陽の目を見る事が出来たのです。

#213 17-11-70

世の中に定着したイメージが実態とかけ離れているというのはよくある事です。
「素顔のままで」「オネスティ」といった曲の印象が強すぎて、バラードシンガーという
イメージが拭えなかったビリー・ジョエルが、実際はR&Rをこよなく好み、その歌詞も
恋愛ものより厭世観や物語的世界を紡いでいた、というのは以前に書きました。
ちなみに「オネスティ」が本国アメリカではそれほど知られておらず、日本や一部のヨーロッパで
のみ人気があるというのも既述です(#191ご参照)。

エルトン・ジョンも同様に「Your Song」「キャンドル・イン・ザ・ウインド」といった
楽曲の知名度が先行し過ぎて、メロディアスな曲ばかり創る、そして歌うミュージシャンであると
いった偏った印象があります。
もちろんそれらのバラードもエルトンの一面である事は否定しませんが、それはエルトンの音楽性の
中のほんの一部分に過ぎません。
#210にてエルトンの人気は、70年のアメリカツアーにおいて火が点いた事は述べましたが、
その雰囲気を存分に味わえるのが翌71年にリリースしたライヴアルバム「17-11-70」であり、
上はオープニング曲である「Bad Side of the Moon」。

本作はN.Y.のFM局のプログラム用に録音されたものなので、厳密には先に述べたコンサートツアーの
それではないのですが、聴衆を入れたスタジオライヴであり、その緊張感や熱気、また米ツアーの
好評とそれを受けてシングルカットされた「Your Song」がチャートを駆け上がっている最中であって、
上り調子であったエルトンのテンション感も相まって素晴らしいパフォーマンスとなっています。

それを支えているのがバックの面々。前からエルトンを語るうえで欠かせない人物たちがいるという事を
述べてきました。作詞家であるバーニー・トーピン、プロデューサー ガス・ダッジョン、
そしてエルトンバンドのメンバーたちです。特にディー・マレー(b)とナイジェル・オルソン(ds)は
エルトンの黄金期を支えた重要人物です。
本ライヴはエルトン、ディー、ナイジェルによるトリオ演奏です。トリオとは思えない、否、
トリオだからこそのプレイなのかもしれません。重厚かつテンション感に溢れた演奏は、
アメリカで火が点いたことも納得出来る素晴らしいパフォーマンスです。
上は言わずと知れたローリングストーンズの「Honky Tonk Women」。エルトンが筋金入りの
ロックンローラーであることを証明する一曲です。

余談ですが、#186にてビリー・ジョエルの「ニューヨーク物語(Turnstiles)」(76年)は当初
エルトンバンドのメンバーを迎えて録音されたが、ビリーがどうしてもそれに納得せず、
結局ビリーのバンドで録り直したという事に触れました。
音楽というのは不思議なもので、個々のミュージシャンは卓越していても、それで良いものが
仕上がるとは限りません。即興を主とするジャズなどは別ですが、ロックの様な音楽は巧い面子が
揃ったから良い、とはならないのです。
おそらくはディーやナイジェルの演奏の ” 鉄壁さ ” がビリーの望むそれとは違っていたのでしょう。
ビリーはもっと粗削りな音を欲していたのだと思います。
この様に幸福な袂の分かち方も時にはあるのです。
ちなみに本作のタイトルが録音日である70年11月17日に由来する事は言うまでもありません。