「あ~!もっと時間があればいろいろやりたい事あるんだよな~!!」
こういうセリフを吐く人にたまに出くわしますが、一日16時間くらい働いていればたしかにしたい事も
出来ないでしょうけれども、往々にしてそういう人は時間があっても何もしないものです。
逆に傍からみると ” あんなに忙しいのにどうやって時間を作っているんだろう? ” というほど多くの物事を
こなす人もいます。時間の使い方の上手い下手もあるのは勿論ですが、人間というものはある程度忙しい中に
身を置いていた方が活動的になるようです。一種の躁状態と言い替えても良いでしょう。
エルトン・ジョンが74年に発表したアルバム「Caribou」はわずか9日間あまりで
レコーディングされたものです。その後に日本公演などを控え詰まりに詰まったタイトスケジュールの間に
録らなければならない状況だったそうです。
オープニング曲である「The Bitch Is Back」。女性に対してお世辞にも上品とは言えない言葉ですが、
この曲においてはエルトン自身を表しているらしいとの事。
この時期エルトンは自身の音楽活動の他に、映画「トミー」への出演及びサントラへの提供や、
ジョン・レノンのアルバムに参加したりと、ちょっと異常とも言えるワーカホリック振りでした。
「トミー」においてはド派手なコスチュームでの魔術師役が有名な所ですが、実はオファーは
初めにロッド・スチュワートへ来ていたとの事。二人は大のサッカー好きという共通点もあり
仲が良かったのですが、ロッドが映画への出演について相談した所、エルトンは断るべきだと告げ
ロッドはそれに従いました。ところが今度はエルトンへ出演依頼が回ってきて、なんと彼はそれを
受けたのです。その辺の感覚は凡人には理解出来ません。
A-②「Pinky」とA-④「Dixie Lily」。後者はお得意のカントリーテイストな楽曲です。
恥をしのんで白状しますが、私永い事「カリブ」はカリブ海のカリブだと思っていました・・・・・
カリブ海に浮かぶ島にあるスタジオで録ったのだろうとか、ぞんざいな推測をしていたのです。
「Caribou」とは北米に生息するトナカイの意。本作はコロラドにある ” カリブー・ランチ ” という
スタジオでレコーディングされ、それにちなむものです。録音場所に由来するという点においては
あながち当たらずとも遠からずいう気も・・・・・しませんね … (*´∀`;)
A-⑤「Solar Prestige a Gammon」はビートルズ後期におけるポールの作風が匂うのですが、
それは私だけでしょうか?
本作ではタワーオブパワーのホーンセクションが数曲において参加しています(#110ご参照)。
A-⑥「You’re So Static」はその中の一曲。
70年代においてエルトンが創った珠玉の作品中において、本作が一番好きという人は多くありません。
しかしながら、前述の様なタイトスケジュールの中で、これだけのクオリティーを誇るアルバムを
創り上げてしまったという事は、この時期のエルトンの異常とも言える創造性も勿論あるのですが、
忙しい中に身を置いているからこそのテンション感、高揚感とでも言いますか、その様なものも
功を奏していたような気がするのです。
B-①「I’ve Seen the Saucers」とB-②「Stinker」。後者はブルース&ソウルミュージックと
いった楽曲ですが、何を演っても絶品なのは言うまでもなし。
エンディングナンバーである「Ticking」は美しい調べに乗せながら救われない歌詞を歌うという、
エルトン&バーニーならではの大作。真面目であれと、厳格に育てられ強迫観念を植え付けられた
少年が犯罪を犯し最期は射殺されるという内容。実在の事件がモデルとも、エルトンの幼少期に
ちなんでバーニーが書いたとも言われています。” Ticking ” とは日本語で言うと ” チクタク ” の意で、
ここでは時限爆弾を表しているとの事。
エルトンの実の父親がかなり厳格な人だったらしく、それがエルトンの性格に影響を与えたと
言われています。
その父親について書こうと思いましたが、長くなったのでそれはまた次回にて。