#252 Jeff Beck_4

ジェフ・ベックという人が気分屋、わがまま、子供の様にすぐへそを曲げてしまうというのは昔から有名な話でした。スティーヴィー・ワンダーとの間で「迷信」をめぐってジェフがへそを曲げてしまったのは有名な逸話です(#117ご参照)。
バンドやバックメンバーが一定しないのはよく言えば常に新境地を得るために変化を求めている、とすると聞こえは良いのですが、要はジェフの気まぐれ・わがままに皆が呆れて付いて来ない、という事にもなります。どちらかと言えば後者が事実だったのでしょう・・・

ヤードバーズを脱退してジェフが組んだバンドがロッド・スチュワートやロン・ウッドを擁した所謂 ” 第一期ジェフ・ベック・グループ ” 、と普通は述べられるところですが、別にこれが間違っている訳ではないのですけれども、正確に言うとこの間にシングルをレコーディングしています。
私も今回初めて聴きましたが、物珍しいので折角の機会に上げておきます。
「Hi Ho Silver Lining」(67年)はジェフ自身の歌で、コーラスにロッドが参加しており、ベースはレッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズです。全英14位のヒットとなります。

順序が逆になりましたが最初の動画が「Shapes of Things」。1stアルバム「Truth」(68年)のオープニングナンバーはヤードバーズ時代のレパートリーからでした。
これもよく言われる話ですが、ジェフ・ベック・グループはツェッペリンでジミー・ペイジがやろうとしていた事を半年先にレコードで出してしまった、というものです。
ペイジは「先を越された!」と思い、逆にツェッペリンが大成功したのを見てジェフは「ペイジの野郎!俺のマネしやがって!!」と悔しがったとか・・・・・(#13ご参照)
近い所で活動していて、同じ様な音楽に触れていたのなら別にパクリでもなんでもなく、同様の方向性を目指しても何ら不思議ではありません。ペイジの方がよりセンセーショナルにインパクトを持ってその音楽を完成させた故の結果、その一点に尽きます。

2ndアルバム「Beck-Ola」(69年)はブルースに根差したハードロックという前作の路線を踏襲しながらよりファンキーな作風となっています。
英国随一のセッションピアニストであるニッキー・ホプキンスの完全参加が音楽性に幅を広げました。
オープニング曲の「All Shook Up」はエルヴィスのナンバー。本作では「監獄ロック」も演っています。
エンディングの「Rice Pudding」はかなりフリーリーな演奏。故にベックらしさが堪能できます。
結論から言ってしまうと1stより2ndの方が断然良いです。1stはこの様なハードロックを世に出したという先見性は特筆に値するものだと言えますが、今一つ突き抜け切れなかった、という印象です。
2ndのジェフは水を得た魚の様に生き生きしています。それは勿論ロッド達他のメンバーも含めてですが。
本作が第二期ジェフ・ベック・グループの布石になった事は容易に想像出来ます。
ちなみに1stでの使用ギターがレスポール、2ndはストラトキャスターとなっており音色の対比も一興です。

時系列は飛んでしまいますけれども上は有名なベック・ボガート & アピス。このバンドは第二期ジェフ・ベック・グループより後なのですが、実は第一期解散後に組まれるはずだったもの。
ヴァニラ・ファッジで活動していたティム・ボガート(b)とカーマイン・アピス(ds)と共に69年9月にはバンドを結成する話は出来上がっていたのですが、12月にジェフが交通事故を起こしてしまい三年近くに渡ってこのバンドが組まれる事は延期されてしまいました。
メンバー全員が既に名声を得ている所謂 ” スーパーグループ ” というやつですが、正直私はそれほどピンときません。当時のロックバンドとしては非常に高い技量を持ったプレイヤーの集まりなのでリアルタイムで聴いた人達にはかなりのインパクトだったのでしょうが、もっと技術レベルの上がった80年代に追体験した私の世代にとっては一回り上の人達ほどの衝撃はなかったのです。
これは仕方のない事ですね。動画は枕で触れた「Superstition(迷信)」と「Jeff’s Boogie」。
結局「迷信」はレパートリーにしたんですね・・・・・…(*´∀`;)…
ただ幻に終わった2ndアルバムのいくつかのトラックは素晴らしいものです、念のため。

ヤードバーズを脱退したのも、ロッドとロンがジェフの元を離れてフェイセズを結成したのも、ジェフの完璧主義と性格に周りが付いていけなかったからだと永らく言われてきました。
しかし後年になって、ロッド達はインタビューでメディアで伝えられてきたような不仲は無かった、俺たちはあの後もジェフとはうまくいっていたんだ、とコメントしているそうです。
一体真実はどちらなのでしょうか?私が思うに多分どちらも本当の事なんでしょう。
プレス連中がことさらゴシップ的に書き立てるのは昔から相も変わらずですが、あれだけ面子が長続きしなかった客観的事実からしてジェフのコミュニケーションに問題があったのもこれまた真実だったのでしょう。
人間時間が経つと昔のことは美化されがちですし、性格も丸くなります(違う人もいますが … )。
ロッドやロンも年を取って、ジェフもそれほど悪いやつじゃなかっ
たよな、と思えてきたのでは。
” 真実はいつも一つ!!” という子供名探偵が出てくる世界の様にはいかないのです。

こぼれ話として。ブライアン・ジョーンズが亡くなった後のローリング・ストーンズにジェフが誘われたというのは有名な話ですが、実はピンク・フロイドにおいても同様の事が。
初代リーダーであったシド・バレットが精神を病んで脱退せざるを得なかった時、彼らはジェフをスカウトしようとしたのですが誰もその度胸がなかった、とドラマー ニック・メイスンの伝記にあるそうです。
人間関係が長続きしないのに、一方では絶えずラブコールを受ける人物 ………
そういう人っていますよね・・・・・…(*´∀`;)…