#263 Simon Phillips

前回のジェフ・ベック回にて「There & Back」を取り上げるならあの曲が抜けてんじゃね!?と思われた方、貴方は鋭い。そうです。今回からの為に敢えて外しておいたのです。ナニ?誰も思わない?その心は?
なぜなら誰も読んでないからです。
おあとがよろしいようで。
イヤ、だから全然よろしくないってば … (´・ω・`)

アルバム「There & Back」B-④に収録された「Space Boogie」。本作におけるハイライト的ナンバーであり、特にその怒涛のドラミングには誰もが「なんじゃあ!こりゃあ!!」と度肝を抜かれる事でしょう。勿論私もその一人です。本曲にてサイモン・フィリップスというドラマーの存在を知った音楽ファンも多いはず。
あっ!知ってましたか?このブログって一応ドラム教室のブログなんですよ。書いてる本人もたまに忘れるんですけどね。ナニ?誰も知らない?その心は?なぜなら誰も読ん
>>>>>しつこい!ヽ( ・∀・)ノ┌┛Σ(ノ;`Д´)ノ

サイモン・フィリップスは1957年英国ロンドン生まれ。父親がジャズのビッグバンドを率いているという音楽に恵まれた環境で育ちました。プロとしてのキャリアは12歳からそのビッグバンドにて始まります。ある時バンドのドラマーが退団してしまいどうしようか?と悩んでいる父親に対してサイモンの母が「あら?ドラマーならここにいるじゃない?」と言って彼を指し示したというエピソードがその昔ドラムマガジンに載っていました。本人へのインタビューを元にしたものなので間違いないでしょう。
やがてセッションミュージシャンとなった彼は70年代半ばからメキメキとその頭角を現します。多様なセッションワークをこなす彼ですが、意外にも当初はヘヴィメタル・ハードロックといったジャンルの音楽でその存在が知られる様になりました。

ジューダス・プリーストのアルバム「Sin After Sin」(77年)のオープニングナンバーである「Sinner」。ロックスピリット溢れるプレイは疾走感に満ち満ちており、彼の8ビートドラミングが堪能出来ます。

マイケル・シェンカー80年のデビューアルバム「The Michael Schenker Group」に収録された「Armed and Read」もストレートなロックチューン。前回取り上げたジェフ・ベックの「El Becko」と同年の録音ですが、一流のプレイヤーは楽曲に沿った演奏をするのは勿論ですけれども、良い意味での「爪痕」を残してその人にしか出来ないプレイをして、一聴すれば「あっ!あの人かな?」と思わせてくれます。スティーヴ・ガッドやジェフ・ポーカロもそうですが、まるで職人がその作品に銘を刻むように。

時系列は前後しますが、サイモンの名を広く世に知らしめた作品が、ブライアン・イーノやフィル・マンザネラといった英国プログレ界の大御所達が結成した「801」によるライブアルバム「801 Live」(76年)です。若干19歳という若さは感じさせないほど貫禄にみなぎり、しかしながら若々しいエネルギーに満ち溢れたそのドラミングは大御所達と対等に渡り合っており、彼らのプレイに対して素晴らしいレスポンス、時としてサイモンからアグレッシヴに仕掛けるといった、本作におけるエッセンスの一端を担っています。上は言わずと知れたビートルズナンバー「Tomorrow Never Knows」。サイケソングがプログレへ。相性が良いのは当然かと

同アルバムからエンディング曲である「Third Uncle」。ストレートな8ビートも変態的プレイ(褒め言葉ですよ)も見事にこなすのは、正常を知っているから狂気を演じられる役者の様な感性ではないかと私は思います。ほんとに頭おかしい人は自身の異常性に気が付きませんからね。

ジェネシスのマイク・ラザフォード初のソロアルバム「Smallcreep’s Day」(80年)でもプレイしています。サイモンの話題から少し離れますが、ジェネシスのメンバーがこれまた当時のプロデューサーであるデヴィッド・ヘンツェルと組んだ作品であるのでジェネシス色が濃くなるのは当然の事でしょう。メロディックな部分を担っていたのがトニー・バンクスであれば、リズミックなアイデアを盛り込んでいたのはマイクやフィル・コリンズだったのかと推測出来ます。ジェネシスの「Duke」(80年)とカラーが非常に似ていますが、制作時期がほとんど同時進行であったのでその様になったのは自然な流れだったのかと(♯24ご参照)。上はA面丸々費やした組曲であるアルバム同名曲における「Out Into The Daylight」。組曲後半のハイライトである本パートを盛り上げるそのドラミングは20代前半の青年とは思えない円熟味すら感じさせます。優れた表現者は早熟である事が多く、年齢など関係ないのかもしれません。

マイク・オールドフィールドによる83年のアルバム「Crises」でもサイモンの素晴らしいドラミングが堪能出来ます。マイク・オールドフィールドと言えば「チューブラー・ベルズ」、それは映画「エクソシスト」のテーマとして有名になりましたが、実は当初映画製作者側が無断で使用し、皮肉にも映画の大ヒットによって本曲が有名になり、またそれは後に大レコード会社へと発展するヴァージンレコードの第一弾作品であった、というのは以前どこかで書いた記憶があるのですが、それが何回目であったかはもうわかりません …
「Crises」はA面タイトル曲は従前通りのプログレナンバー(とは言えそれ以前よりはだいぶ聴きやすくなっています)、B面は馴染みやすいポップナンバーとカラーが分かれています。どちらも見事に叩き分けているのはこれまで述べてきた通りですが、やはり長尺曲のラストを飾るプレイが聴き所であるのは言わずもがなです。
本曲は20分以上ありますが、お時間の許す方もそうでない方も良ければご一聴の程。

何しろセッションプレイヤーですので紹介出来るのは極々ほんの一部です。90年代以降はジェフ・ポーカロ亡き後のTOTOに加入した事はあまりにも有名であり、またジャズ・フュージョン系のセッションも含めると切りがありませんのでこの辺りで。次回以降はそのプレイスタイルや機材面などに触れて行きたい思います。