#269 Party at the Palace_2

エリザベス女王即位50周年記念コンサートについてその2。前回にて最も盛り上がったのはオジー・オズボーンのステージと述べましたが、甲乙つけがたいパフォーマンスがもう一つあります。

それがジョー・コッカー「With a Little Help from My Friends」です。ウッドストックにおける強烈なステージ以来彼の代表的なレパートリーとなりました。言うまでもなくビートルズナンバーですが詳しくは#36をご参照の程。フィル・コリンズ、ブライアン・メイ、そしてうっかり見逃しそうですがスティーヴ・ウィンウッドがオルガンを弾いています。贅沢なラインアップも勿論ですが三人の女性コーラスも素晴らしい。彼女たちの力によって本ライヴは一段高いレベルへと引き上げられています。

そのウィンウッドのステージは現在のYouTubeで本コンサートを検索して出てくる動画一覧に上がってきません。別途にググると出てきます。当たり前のようにフィル・コリンズがドラムを叩き、そしてイギリスを代表するパーカッショニスト レイ・クーパーも彩を添えています。レイはライヴエイドでも大活躍でした。前々回#267で取り上げたエルトン・ジョンとジョージ・マイケルによる「Don’t Let The Sun Go Down On Me」でも素晴らしいパフォーマンスが繰り広げられています。彼は俳優でもあります。ベーシスト ネーザン・イーストもそうですが、演奏技術も勿論の事、本当に素晴らしいエンターテイナーとはこういう人達です。ちなみに動画のタイトルにはエリック・クラプトンの名も冠せられていますがこの「Gimme Some Lovin’」でクラプトンは弾いていません。

そのクラプトンの演奏ですが一つは「Layla」。何故か後半のパートが切られています。昔は全部まるっと上がっていたのですが … 。もう一曲は「While My Guitar Gently Weeps」です。「Layla」は定番曲ですから当然と言えば当然なのですが、本曲が演奏された理由は言うまでもありません。前年に亡くなったジョージ・ハリスンへのレクイエムとしてです。ポール・マッカートニーとクラプトンが一緒に本曲を演奏している、鎮魂歌としてこれ以上のものはありません。あまりにも有名な話ですがジョージとクラプトンについてのエピソードを知りたい方は#9をご参照の程。

ポール・マッカートニーはエリザベス女王と8~9回謁見したそうです。ビートルズ時代の65年にMBEを受勲した事に始まり、ナイトの称号を授かった時、またポールが催した絵画の展示会で女王を案内したこともあるそうです。本コンサートはその機会の内の一つ。
女王の前で「Her Majesty」を演奏する。多分これが許されたのはポール・マッカートニーだけでしょう。演奏後に女王の表情がちらりと映りますが微妙な顔をしている様に見えるのは気のせい?
全六曲の演奏の内自作のものが四曲。既述の「While My Guitar Gently Weeps」がもう一つ、そしてその他のもう一曲が最初に上げた「All You Need Is Love」です。一応知らない方の為に本曲はジョン・レノンのペンによるもの。四拍子と三拍子が混在する結構難しい曲なのに聴衆達も全く問題なく口ずさみ、またリズムにも乗れています。それだけ本曲が英国人に馴染みがあるというのもありますが、トリッキーなリズムを意識させないジョンの曲創りの妙であったとも言えるでしょう。

女王陛下の式典にて、悪魔崇拝を掲げていたヘヴィメタルバンドや体制を皮肉った曲を歌っていたミュージシャンが出演する、この辺りにイギリスという国の奥深さを感じられます。ブラックジョークが通じる国民性、しかし常にどんよりとした天気のせいか鬱々とした気質も持ち合わせた複雑な国。しかしそれが当たり前なのでしょうけれども。常に幸せそうな国民の笑顔が君主へ向けられているのは某国によるプロパガンダ映像の中ですから(コンコン … )おや?誰か来

二回に渡ってエリザベス女王即位50周年記念コンサート『Party at the Palace』を取り上げました。当たり前ですが取り上げられなかった出演者の方が圧倒的に多いです。私の洋楽知識が80年代で止まっているので90年代以降に活躍したミュージシャン達については疎いため、興味のある方はブログタイトルをコピーしてYouTubeで検索すれば先述の動画一覧が出てきますのでそちらをどうぞ。

しかしさっき訪ねてきた黒ずくめの人達は誰だったのでしょう?その後記憶がぷっつりと途切れ、気が付くとまたこのPCの前にいました。某国?プロパガンダ?何のことでしょうかね?
・・・(´・ω・`)???

#268 Party at the Palace

ライヴエイドについて前回まで取り上げていましたが、趣旨こそ全く違えど、大規模かつきら星の如きスーパースター達が集結したという点においては同様の、とあるコンサートを思い出してしまいました。

02年に行われたエリザベス女王即位50周年記念コンサート。” Party at the Palace ” と銘打たれた本コンサートは文字通り女王の ” 庭 ” であるバッキンガム宮殿にて催されました。
女王自身はクラシック音楽やスコットランドの音楽を好んでいたそうです。目覚ましはバグパイプの音にしていたというエピソードもあります。実際即位50周年を祝うクラシックのコンサートも別に催されました。しかしながらイギリスの音楽と言えば、50年代にアメリカで生まれたR&Rを取り入れ、ビートルズをはじめとした60年代の若者たちが独自に進化・深化させ確立させた ” ロックミュージック ” であると言って過言ではないでしょう。
英国を代表するミュージシャンやバンドが一堂に介して行われた本コンサートはブライアン・メイが演奏する「God Save the Queen」で幕を開けます。

才女アニー・レノックス。王立音楽アカデミー出のエリートである彼女を私は勝手にロンドンのイイとこの娘だと思い込んでいたのですが、スコットランド出身の決して裕福ではない生まれであり、パブやクラブでウェイトレスや勿論歌って学費や生活費を稼いでいたという事を知ったのはだいぶ後年になってからでした(#100ご参照)。

当然の様にフィル・コリンズも出ています。他の出演者のバックでもドラムを叩くなど精力的ですが、やはり80年代の様なアクティヴさには欠けます。この頃から体調は悪かったのでしょうか?

イギリスのミュージシャンだけではありません。トニー・ベネットやブライアン・アダムス(カナダ出身)も出演しています。この時トニー・ベネットは75歳。朗々と歌い上げる姿は圧倒的です。90代まで現役で歌い続けていた彼を観ると、自分などまだまだヒヨッコだと思い知らせます。

前々回にも触れましたが最も会場が盛り上がったのはオジー・オズボーンのステージでした。最後の方に映るチャールズ現国王をはじめとしたロイヤルボックスの反応が印象的です。これが許されるのがイギリスという国の懐の深さでしょう。その前々回の投稿の直後にオジーは亡くなってしまいました。引退ライヴを終えた後に、まるで全てをやり遂げてから旅立った様な最期でした。合掌。

他国から招かれ最も長くステージに上がったのがブライアン・ウィルソンです。サーフィン・車・女の子といったビーチボーイズの一般的なイメージからすると何故英国の式典にて?と思ってしまいますが、60年代半ばからビートルズと切磋琢磨し互いに刺激を受けながらロックを一段高い表現へと昇華させた事はむしろイギリス人の方がよく理解しているかもしれません。「サージェント・ペパーズ」と並び現代でもロックにおける名盤の双璧と称される「ペットサウンズ」は、リリース当初本国では受け入れらず、むしろ海を隔てたイギリスで大いに反響を得ました。ジョン・レノンとポール・マッカートニーは本作に衝撃を受け、それが「サージェント・ペパーズ」の創作へ多大な影響を与え、ミック・ジャガーはロンドン中のDJに ” このレコードをかけろ! ” と言って回ったというのはロックファンには結構知られた事です(#2ご参照)。
「California Girls」で幕を開けるのですがその動画は上がっていません。2曲目が「The Warmth of the Sun」。ジョン・F・ケネディの悲劇的な死にインスパイアされ創った本曲には穏やかな悲しみ・慈しみといった形容が相応しい。エリック・クラプトンが歌とギターでゲスト出演しています。この曲にクラプトンの歌がマッチしているとは決して思いませんがギターは素晴らしいです。この時期よく弾いていた友人のデザイナーにペイントさせたストラトキャスターは01年頃の日本公演でも観ることが出来ます。彼のシグネチャーモデルは90年代のレースセンサーピックアップを搭載したものが評価が高いですが、その後のフェンダー純正ピックアップ(多分ノイズレスピックアップ)を使用したものはストラト本来の持ち味である枯れた伸びのある高音が堪能出来ます。

ブライアンも6月11日に永眠しました。享年82歳。一時は廃人同様となったにも関わらずその後奇跡的なカムバックを果たし、病気は生涯完治することはありませんでしたがそれでもなお音楽を演り続けました。結果的にウィルソン3兄弟の中では最も長生きし、大往生であったと言えるでしょう。

その2へ続きます。