そのプレイヤーの演奏で一番好きなものと、楽曲として最も優れているものが必ずしも一致するとは限りません。以前にもこの様な文章を書いた気がするのですが、260回にもなるとさてどこで書いたものやら?
もう調べる気も無くなったのでスルーして先に進みます。えっ、大丈夫?誰も読んでないから?・・・・・・
やだな~そんなホメないでくださいよ~
ジェフ・ベックのアルバム「Blow by Blow」(75年)について三回目です。前回B-①「哀しみの恋人達」にまるまる一回を費やしたので今回はB面におけるその他の楽曲について。
B-②「Thelonius」は「哀しみの恋人達」同様にスティーヴィー・ワンダーから提供されたもの。
イントロにおけるドラムの音色、フレーズ、そしてグルーヴが何とも堪りません。リチャード・ベイリーはこの時若干18歳。決して技術的に難しいプレイではありませんが、” スペース ” を巧みに使ったフレージングはもはや円熟の域に達していると言っても過言ではありません。彼は本作に参加する以前にはボブ・マーリーのレコーディングやツアーに加わっていたらしく、間を巧く使う発想はレゲエから得たのかもしれません。
正式にクレジットされているわけではないのですが、本曲のクラヴィネットはスティーヴィーが弾いているとされています。よりファンキーな仕上がりはそのせいかも?
トーキング・モジュレーターやオクターバーを用いたプレイは控えめであり、決して怒涛の如く弾きまくるといったものではないのでひたすらジェフのプレイが聴きたい、というファンには物足りない面もあるでしょうが、コードストロークに徹したり、本曲の様にサウンドやグルーヴを重視するのもジェフ・ベックの音楽の一つです。彼は音楽本位の人なので決して自分が弾きまくらなくても良いと思っていたようです。
「哀しみの恋人達」と共に本作で取り上げられる事が多いB-③「Freeway Jam」はジェフにとって重要なライヴナンバーでもありました。検索すればかなり多くのものが上がってきますが二つだけ。
ライヴアルバム「ライヴ・ワイアー」(76年)に収録されたヴァージョンが最も知られているものでしょう。
交通渋滞を意味する ” traffic jam ” をもじったであろうタイトル通りクラクションや通過音のSEから始まる本演奏は、「高速道路」と「好きな様に」及び「渋滞」と「ジャムセッション」を掛けたダブルミーニングまさしく好き放題に演っています。
二つ目はこれも有名な軽井沢でのコンサートでのもの(86年)。サンタナやスティーヴ・ルカサーと夢の競演とうたわれた本公演は高校の同級生が観に行って当時さんざん話には聞かされましたが、現在ではユーチューブでいとも簡単に観れてしまいます。イイ時代ですね。
本曲はヴァースとコーラスで言うとヴァースのパートがワンコードです。であるので思う存分ジャム出来る、というよりもその為にワンコードにした、といった所でしょうか。ジェフらしいプレイが聴ける、という意味においては「哀しみの恋人達」よりも本曲の方が適しています。泣きのギターも素晴らしいのは言わずもがなですが、やはりジェフ・ベックの真骨頂はあらゆる音色・フレージング(トリッキーなものや時にはノイズと思えるものまで)を取り込んだ自由なプレイスタイルです。折に触れ述べる事ですけれどもその意味ではジミ・ヘンドリックスと同じベクトルのギタリストでした。
本曲はギターだけではなく他のパートも秀逸です。このベースとドラムがあってこそ本曲は成立しています。特に中盤から絡みつくようなドラムのプレイは「Scatterbrain」同様にジャズ的なインプロビゼーションです。そしてエンディングでのマックス・ミドルトンのフェンダーローズ(エレクトリックピアノ)は何度聴いても本当に素晴らしい。
最後に冒頭の動画に戻りますが、エンディングナンバーであるB-④「Diamond Dust」が個人的には本作におけるベストトラックです。#5で既述の事ですがジョージ・マーティンによるストリングスアレンジをジェフは快く思わないのでは?と周りの皆が思っていたところ、予想に反してジェフはそれをあっさり受け入れたそうです。とかく気難しい、子供っぽい、へそ曲がり(ヒドイ言われ様だな … )と伝えられているジェフですが、こと音楽に関しては出来上がりが良ければノープロブレムという音楽本位の人であったのでしょう。他の事については知りませんが …
本曲はジェフのプレイのみならず、メンバー全員の演奏及びアレンジ全てが高い次元で完成されており、タイトルであるダイアモンドダストの瞬きを見事に音で表現した名演です。
ジェフのプレイだけを取れば私は本作においては「Freeway Jam」が白眉と思いますが、楽曲としての完成度という点では本曲に軍配が上がります。
ちなみにダイアモンドダストは日本語で『細氷』。大気中の水蒸気が昇華して出来たごく小さな氷晶が降ること、とあります。本曲もジェフをはじめとしたメンバー及びプロデューサーであるジョージ・マーティン達それぞれの演奏そしてスタジオワークという結晶が ” 昇華 ” して生まれた産物なのかもしれません。
あっ!ウマイこと言っちゃいましたかね!(´∀`*)
イヤ、全然ウマくないよ (´・ω・`)
ちなみにアルバムタイトルである「Blow by Blow」の意味を永い間勘違いしていたというのも#5で既述です。宜しかったらご一読のほど。