前回より、60年代後半から興ったサイケデリックロックをはじめとして、ロック史においてエポックメイキングとなったミュージシャンを取り上げていくこととなりました。第二弾はアメリカのロックバンド ドアーズです。・・・ベタですね、もうちょっとヒネリの効いたセレクションの方が良いかとも思いましたが、奇をてらえばイイというものでもないと考え、割と直球ど真ん中から選んでみました。
ドアーズは65年、ロサンゼルスにて結成されました。ごく初期にはメンバーチェンジが行われたようですが、一般に認知されているオリジナルメンバーとしてはジム・モリソン(vo)、レイ・マンザレク(key)、ロビー・クリーガー(g)、ジョン・デンスモア(ds)です。このバンドが語られる際、まずジム・モリソンが書く文学的・誌的な歌詞がよく取り上げられるところですが、モリソンの歌詞については、それについてディープな考察をしているサイトが幾らでもありますので興味のある方はそちらをご覧ください。バンドの特色としてはその歌詞を除けば、オルガン・エレピを中心とした独特のサウンド、モリソンの際立ったステージパフォーマンス(多分にセクシャルな意味での)が挙げられます。
今回のテーマであるところのあまりにも有名な「Light My Fire(ハートに火をつけて)」は1stアルバム「The Doors」からの2ndシングル。ホセ・フェリシアーノのカバーをはじめ、多数のミュージシャンに演奏され、歌われ続けている曲。もはやスタンダードナンバーと呼んでも差支えないと私は思っています。本曲はロビー・クリーガーが初めて作曲した曲とのこと。初めての創作曲が全米NO.1ヒットとはなんとも凄い事です。なんでも、レコードデビュー前はモリソンが殆どの曲を作っていたそうですが、モリソンに「お前も作れ!」と言われて書いた曲だそうです。もっともモリソンが作る曲は大抵3コードの曲だったらしく、モリソンとの差別化を図るためにも使うコードも俄然多くしたとのこと。もともとはスパニッシュ(フラメンコ)ギタリストだったこともあって、普通のR&Rにありがちな楽曲作りは自然と避けられたのかもしれません。勿論マンザレクの助力もあっての事です。
その後も2nd・3rdアルバムと立て続けに大ヒットを記録し、飛ぶ鳥を落とす勢いでした。しかしモリソンのエキセントリックな言動やパフォーマンスも”勢い知らず”で、有名な話ですがあるTVショーにて、本来の歌詞はテレビでは不適切なのでその箇所だけ変えて歌うという示し合わせを”見事に”裏切ってそのまま歌って司会者を激怒させました。さらにこれまたよく知られたエピソードですが、69年3月マイアミでのコンサートにて、あろうことかステージで性器を露出し逮捕されます。
音楽外においても話題に事欠かなかったモリソンでしたが、デビュー前の彼を知る人のコメントでは、本来は文学や映画を好む物静かな青年だった、という意外な一面も語られています。どちらが本当のモリソンなのか、それともいずれの側面も生来のものなのか、しかしいずれにしても、いきなりの成功が彼の人生に(良くも悪くも)急激な変化を及ぼしたことは間違いないでしょう。
やがて当時のロックミュージシャンにおけるお約束といっていい程の、ドラッグへの傾倒という道を辿り(良い子のみんなは… しつこいな・・・)、音楽面でも徐々に変化が表れてきます。その辺りはまた次回にて。