#57 Kiss on My List

77年の初めに「リッチ・ガール」がNo.1ヒットとなったホール&オーツですが、
同年9月リリースのアルバム「Beauty on a Back Street(裏通りの魔女)」が30位、
「Along the Red Ledge(赤い断層)」(78年)27位、「X-Static(モダン・ポップ)」
(79年)33位と、何とかTOP40に入る程度。シングルは「It’s a Laugh」(78年)
20位、「Wait for Me」(79年)18位というチャートアクションで、TOP20に
辛うじて入っている、といった結果でした。「裏通りの魔女」と「赤い断層」は結果的に
ゴールドディスクとはなりましたが、やはりかつてはNo.1ヒットを飛ばしたグループとしては
その結果はやや寂しいものでした。率直に言って人気の低迷期といって差し支えないでしょう。

 

 

 


だからと言って内容的にも落ち込んでいたかというと決してそうとは言い切れませんでした。
この時期を評して、昔よく言われたのが”過渡期・試行錯誤”といったものでした。
一時期のデヴィッド・ボウイもそうでしたが、アルバム毎にカラーが変わったとされます。
「裏通りの魔女」はハードロック、「赤い断層」がフィル・スペクターサウンド、そして
「モダン・ポップ」はディスコやニューウェイヴ。サラ・スマイルやリッチ・ガールの頃の
ブルーアイドソウル色が薄れ、良く言えば新しい音楽性に果敢にチャレンジ、悪く言えば
方向性を見失ったと言われます。私見ですが、作品毎にガラッと変わったという訳では無く、
それまでの音楽性を3~5割踏襲しながら新しい試みに挑戦していった、といった所が
実際だったと思っています。
レコード会社もおざなりな扱いをした、とかいう事では決してなく、むしろ参加ミュージシャン達を
見るとすごい面子が起用されていたりします。
今回調べていて初めて気が付いたのですが、「裏通りの魔女」のドラムはジェフ・ポーカロです。
確かにあのドラムはジェフの音色です。30年以上経って改めて判る事がいまだにあります…
他にはトム・スコット、ジョージ・ハリスン、スティーヴ・ルカサー、さらには何とロバート・
フリップまで。もっともフリップの参加には理由があります、これは次回にて。

80年7月、アルバム「Voices(モダン・ヴォイス)」を発表。よく”原点回帰”をした作品と
評されます。つまり彼らのルーツであるソウルミュージックへ戻ったという事。半分当たっていて、
半分は適当ではない評価かな、と個人的には思っています。先述したように全曲ソウルへと
回帰したかというとそうではなく、具体的に言えばA面は1stシングルであるジョン作のA-①
とA-⑥を除けばストレートなロックナンバー及びポップソングで固められており、
B面がブラックミュージックサイドと呼べるものでした。余談ですが昔はA面とB面で
楽曲やサウンドをはっきり分けているアルバムが結構ありました、レコードという媒体の特性が
あってこその事だった訳ですが、CDや配信の時代になって意味が無くなりましたが・・・

ライチャス・ブラザーズによるヒットであまりにも有名な、バリー・マン/シンシア・ワイル、
そしてフィル・スペクターによる、ブルーアイドソウル並びにフィル・スペクターサウンドの
名曲として名高い「You’ve Lost That Lovin’ Feelin’(ふられた気持ち)」を2ndシングル
としてリリース。全米12位という久々のヒットを記録します。

3rdシングル「Kiss on My List」、今回のテーマです。元々はダリルと長年に渡り、公私共に
おけるパートナーであったサラ・アレンの妹 ジャナが歌う目的でダリルとジャナによって
作られた楽曲。しかしダリルが歌ったデモテープを聴いたスタッフがそのあまりの出来の良さに、
これはホール&オーツとして出すべきだ、とプッシュした事から「モダン・ヴォイス」へ収録されます。
本当に人生というのは何をきっかけとして好転(勿論その逆も)するかわかりません。
本曲はみるみるうちにチャートを駆け上がり、3週連続全米No.1の大ヒットとなり、その年の
シングル年間チャートにおける第7位となります。
本曲は決してソウル色の強いナンバーという訳ではありません。リズムボックスが生ドラムと
混在して使われているという点を除けば、非常にシンプルな楽器編成で特に実験的要素なども
感じられないポップソングです。ヒットの要因はひとえに楽曲の良さ、楽曲に寄り添った
シンプルではあるがツボを得た好演、そして勿論のこと、不世出のシンガー ダリル・ホール
による素晴らしい歌、これらが人々の心を打ったのです。なおトリビア的な事柄ですが、本曲の
ビデオクリップは81年から始まったMTVの初回放送時において流されたものの一つです。

この大ヒットをきっかけとして彼らの第二次黄金期がスタートするのは周知の事実です。
ソウルミュージックへの原点回帰と評されたアルバムからシングルカットされ、再ブレークの
火付け役となった楽曲ですが、それはブルーアイドソウル的ナンバーではありませんでした。
(しかし彼らがソウルを捨てた、とかいう訳ではありません。それはこの後すぐにわかります。)

多分本来はシングルカットされる予定は無かったのだと思われますが、前曲の大ヒットを受けて
リリースされたのでしょう。4thシングル「You Make My Dreams」も全米5位の大ヒット。
彼らの素晴らしい所は、二匹目のナンチャラを狙うのであれば前曲同様のポップソングを
シングルとしてリリースしそうなものですが、それはせずに、自分たちの”根っこ”である
ブラックミュージックをあえて持ってきたことです。結果、それは大成功しました。
また、
本作には大変重要な楽曲がもう一曲収録されていますが、それはまた次回以降で。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です