おそらく一人か二人しかいない読者の方にも忘れ去られているかもしれませんが(ひ、一人もいないって言うなー!!━━━(# ゚Д゚)━━━ )、一応ドラム教室のブログです…
前回、TOTOを取り上げましたが、それでこの人に触れない訳にはいきません。そう、今回からのテーマはTOTOの結成メンバーであり、数々のセッションワークで数多の名演を残してきたドラマー ジェフ・ポーカロ(Jeff Porcaro)です。ちなみにドラマー個人を取り上げるのは#20~21でのビル・ブラッフォード回以来であります。一年以上書いてきてようやく二人目です・・・

この時ジェフは若干19歳、しかしツボを心得た”歌モノ”のバッキングの仕方は既に完成されています。ちなみに本曲はアメリカでは卒業式・結婚式など門出の席で歌われる定番曲だそうです。ソニー&シェールの下では週に1500ドルの稼ぎを得ていたジェフですが、何とその後週給400ドルでスティーリー・ダンと契約します。以前から彼らの音楽には強い興味を覚えていて、是が非でも参加したいと思ったそうです。ジェフがほぼ全面的にプレイしているのは75年の「Katy Lied(うそつきケイティ)」。ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの二人は勿論、当時スティーリーに参加していたマイケル・マクドナルドともここで接点を持ちます。後に彼らと素晴らしい名盤を創り上げていくのは周知の事実です。本作ではオープニング曲の「Black Friday」が有名であり、ここでのシャッフルビートも勿論素晴らしいのですが、ジェフのグルーヴ・音色を最も堪能できると私が思うのは次の「Bad Sneakers」です。
ジェフの使用機材と言えばパールのドラムにパイステシンバルというイメージが強いですが、パールとエンドース契約を結ぶのは83年の事。わずかな資料しか探せなかったのですが、70年代はラディック・グレッチ等を使用していたとの事で、ラディックはリンゴ・スターの影響によるもの。スネアはスリンガーランドの名器『ラジオキング』をメインに使っていたそうです。タイトでありながらしっかりと鳴っているそのスネアは少なくとも80年代初頭まで使われたのではないかと思われます。木胴(単板メイプル)らしい温かみのある音はこの時期のジェフを象徴する音色です。80年代前半辺りから、ラディック ブラックビューティーやパールのスネア(共に金属胴 ブラスシェル)を使用するようになりましたが、個人的にはジェフのスネアはウッドシェルの音色が好みです。勿論セッションによって機材は変えていたらしいので、全てがそうではない事は言わずもがなです。
おそらくジェフのセッションワークで最も語られることの多いボズ・スキャッグスの名盤「Silk Degrees」(76年)。ジェフ本人もインタビューにて、自身のプレイの中で最も納得している一つと語っています。
ジェフのドラミングではそのタイトに刻まれるハイハットワークもよく取り上げられます。皆がドラムに興味がある方という訳でもないでしょうから、簡単にハイハットとは何かを。まず主に銅や錫といった金属を溶かして鋳型に流し込んで固めた後職人が丹精込めてコツンコツンと…長いわ!ヽ( ・∀・)ノ┌┛Σ(ノ;`Д´)ノ
左足で操作する合わせシンバルですね。叩いて良し・踏んで鳴らして良し、また足による開閉と手のショットを組み合せた”チッ・チー・チッ・チー”といったオープン・クローズ奏法と、ヴァリエーションに富みます。
ジェフが刻むハイハットはそれだけ聴いているだけで気持ちよくなるほどです。前述の通りパイステのイメージが強いのですが、ある時期まではジルジャンを使用していたとの事。正直70年代中期のこの音がどちらのメーカーであるかは判別出来ません。私見では何となくジルジャンっぽい気もしますが…
あまりにもベタですが、そのハイハットワークを味わうなら何と言ってもこの曲。「シルク・ディグリーズ」からの大ヒットシングル「Lowdown」。ちなみにオーヴァーダビングされ、左右に振り分けられています。ジェフは当初シンプルに4分・8分で刻んだそうですが、周囲の人達の”16分音符でも刻んでみれば?”という要望に応え、結果その両方が採用されこの名演が出来上がりました。実際にジェフにはハイハットのみを叩いて欲しいという依頼もよく来たそうです。
私も今回調べていて初めて知ったのですが、「シルク・ディグリーズ」と同時期にほぼ同様の面子でボズがプロデュースしたあるアルバムのレコーディングが行われていました。レス・デューデック(Les Dudek)の1stアルバム「Les Dudek」。デューデックという人はボズと同じくスティーヴ・ミラー・バンドに在籍し、ボズのバックでギターを弾いていた事もあり、その縁から彼のプロデュースの下にアルバム制作となったようです。ここでのジェフのプレイもシルク・ディグリーズに負けず劣らず素晴らしいものです。本作からオープニングナンバーである「City Magic」。
当然の事ながら、とても一回では書き切れませんのでジェフ・ポーカロ回は次回以降も続きます。