#63 Jeff Porcaro

おそらく一人か二人しかいない読者の方にも忘れ去られているかもしれませんが
(ひ、一人もいないって言うなー!!━━━(# ゚Д゚)━━━ )、一応ドラム教室のブログです…
前回、TOTOを取り上げましたが、それでこの人に触れない訳にはいきません。そう、今回からの
テーマはTOTOの結成メンバーであり、数々のセッションワークで数多の名演を残してきた
ドラマー ジェフ・ポーカロ(Jeff Porcaro)です。ちなみにドラマー個人を取り上げるのは
#20~21でのビル・ブラッフォード回以来であります。一年以上書いてきてようやく二人目です・・・

1954年コネチカット州生まれ。ドラム・パーカッションプレイヤーであるジョー・ポーカロを
父に持ち、7歳頃からドラムを始める。プロドラマーとしてのキャリアは、「I Got You Babe」
等の大ヒットで知られる夫婦デュオ ソニー&シェール(Sonny & Cher)のオーディションに
受かった所から始まります。高校を中退して彼らのツアーに同行したのが72年の事。
この頃のソニー&シェールによる作品における演奏者のクレジットが定かではないので、私が調べた
限りで間違いなくジェフによるプレイと断定出来る最初のものは、L.A.で結成され「Summer Breeze
(想い出のサマー・ブリーズ)」(72年)のヒットで有名なシールズ&クロフツ(Seals & Croft)による
73年発表「Diamond Girl (僕のダイアモンド・ガール)」に収録の「We May Never Pass This Way Again(この道は一度だけ)」。本作にはハーヴィー・メイスンやジム・ゴードンといった当時L.A.に
おける所謂”ファーストコール”のトップドラマー達も参加していますが、本曲は間違いなくジェフによる
プレイです。ちなみに後にTOTOを共に結成するデヴィッド・ペイチも参加しています。

この時ジェフは若干19歳、しかしツボを心得た”歌モノ”のバッキングの仕方は既に完成されています。
ちなみに本曲はアメリカでは卒業式・結婚式など門出の席で歌われる定番曲だそうです。
ソニー&シェールの下では週に1500ドルの稼ぎを得ていたジェフですが、何とその後週給400ドルで

スティーリー・ダンと契約します。以前から彼らの音楽には強い興味を覚えていて、是が非でも参加したいと
思ったそうです。ジェフがほぼ全面的にプレイしているのは75年の「Katy Lied(うそつきケイティ)」。
ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの二人は勿論、当時スティーリーに参加していたマイケル・
マクドナルドともここで接点を持ちます。後に彼らと素晴らしい名盤を創り上げていくのは周知の事実です。
本作ではオープニング曲の「Black Friday」が有名であり、ここでのシャッフルビートも勿論素晴らしいの
ですが、ジェフのグルーヴ・音色を最も堪能できると私が思うのは次の「Bad Sneakers」です。

ジェフの使用機材と言えばパールのドラムにパイステシンバルというイメージが強いですが、パールと
エンドース契約を結ぶのは83年の事。わずかな資料しか探せなかったのですが、70年代はラディック・
グレッチ等を使用していたとの事で、ラディックはリンゴ・スターの影響によるもの。スネアは
スリンガーランドの名器『ラジオキング』をメインに使っていたそうです。タイトでありながら
しっかりと鳴っているそのスネアは少なくとも80年代初頭まで使われたのではないかと思われます。
木胴(単板メイプル)らしい温かみのある音はこの時期のジェフを象徴する音色です。80年代前半
辺りから、ラディック ブラックビューティーやパールのスネア(共に金属胴 ブラスシェル)を
使用するようになりましたが、個人的にはジェフのスネアはウッドシェルの音色が好みです。
勿論セッションによって機材は変えていたらしいので、全てがそうではない事は言わずもがなです。

おそらくジェフのセッションワークで最も語られることの多いボズ・スキャッグスの名盤「Silk Degrees」
(76年)。ジェフ本人もインタビューにて、自身のプレイの中で最も納得している一つと語っています。

ジェフのドラミングではそのタイトに刻まれるハイハットワークもよく取り上げられます。皆がドラムに
興味がある方という訳でもないでしょうから、簡単にハイハットとは何かを。まず主に銅や錫といった金属を溶かして鋳型に流し込んで固めた後職人が丹精込めてコツンコツンと…長いわ!ヽ( ・∀・)ノ┌┛Σ(ノ;`Д´)ノ
左足で操作する合わせシンバルですね。叩いて良し・踏んで鳴らして良し、また足による開閉と手のショットを組み合せた”チッ・チー・チッ・チー”といったオープン・クローズ奏法と、ヴァリエーションに富みます。
ジェフが刻むハイハットはそれだけ聴いているだけで気持ちよくなるほどです。前述の通りパイステの
イメージが強いのですが、ある時期まではジルジャンを使用していたとの事。正直70年代中期のこの音が
どちらのメーカーであるかは判別出来ません。私見では何となくジルジャンっぽい気もしますが…
あまりにもベタですが、そのハイハットワークを味わうなら何と言ってもこの曲。「シルク・ディグリーズ」
からの大ヒットシングル「Lowdown」。ちなみにオーヴァーダビングされ、左右に振り分けられています。
ジェフは当初シンプルに4分・8分で刻んだそうですが、周囲の人達の”16分音符でも刻んでみれば?”
という要望に応え、結果その両方が採用されこの名演が出来上がりました。実際にジェフにはハイハット
のみを叩いて欲しいという依頼もよく来たそうです。

私も今回調べていて初めて知ったのですが、「シルク・ディグリーズ」と同時期にほぼ同様の面子でボズが
プロデュースしたあるアルバムのレコーディングが行われていました。レス・デューデック(Les Dudek)の1stアルバム「Les Dudek」。デューデックという人はボズと同じくスティーヴ・ミラー・バンドに
在籍し、ボズのバックでギターを弾いていた事もあり、その縁から彼のプロデュースの下にアルバム制作と
なったようです。ここでのジェフのプレイもシルク・ディグリーズに負けず劣らず素晴らしいものです。
本作からオープニングナンバーである「City Magic」。

当然の事ながら、とても一回では書き切れませんのでジェフ・ポーカロ回は次回以降も続きます。

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