#113 David Garibaldi_3

デヴィッド・ガリバルディ特集の3回目、今回が最後です。

ガリバルディのグリップは映像を観る限りではマッチドグリップ(左右が同じ握り方)ですが、
本人の弁によると74年頃までにおいてはレギュラーグリップで、またフットペダルの
奏法についてもヒールダウン(踵を付けたまま足首の動きだけでペダルを踏む)を用いていたと
語っており、つまり昔ながらのジャズドラマー的スタイルでした。75年頃からマッチド、
そして足も踵を上げて足全体で踏み込むヒールアップを使用するようになったそうです。
細かいニュアンスはレギュラーグリップ、パワーを出したいならマッチドグリップが
向いているとよく言われます。確かに一般的にはそうであるとは思います。思いますが・・・
ガリバルディをはじめ、ジェフ・ポーカロ、ビル・ブラッフォード(#20~21)、そして神保彰さんなど
マッチドグリップの使い手を観ていると、とてもマッチドが細かいニュアンスを付けるのに
不向きなどとは思いません。逆にレギュラーはパワーが出ないからロックは出来ない、などと言う人は
スチュワート・コープランド(#94~95)
のプレイを観た方が良いでしょう。要はそのプレイヤー
次第なのです。上は教則ビデオ「タワー・オブ・グルーヴ」に収録の「Escape From Oakland」。
左手のプレイを視覚的に十分確認する事が出来ます。それにしても「Back to Oakland」に対して「Escape From Oakland」とは皮肉が効いています。もっとも本編では苦笑まじりに
『いや、オークランドはイイ所だけどね・・・』とフォローしていますが…

タワー・オブ・パワー時代のセッティングはスリンガーランドのセットで、ベースドラム20インチ、
タム12インチ、フロアタム14インチという小口径の所謂3点セット。スネアはラディックの
定番スティール(ステンレス)シェルで浅胴と深胴の二種類を使っていたとの事。「Back to Oakland」
制作時辺りから裏面ヘッドを外すようになったと述べており、打面側にテープでミュートをし、とにかく
タイトなサウンドを、目指したのはジェームス・ブラウン(のドラマー)だったと語っています。
上は73年、ソウルトレイン出演時の模様。あまり映りませんが、裏面ヘッドを外しグリップは
レギュラーグリップを用いているのが確認出来ます。ユーチューブで ”tower of power live” にて
検索するとこれ以外にも若干ですが70年代の映像が出てきます。30分超の画質音質共にこの時代と
しては良好な、やはり73年のライヴ映像も上がってますので興味がある人は。
80年代以降はヤマハドラムスのエンドーサーとなり、シンバルに関してはパイステ、比較的最近の
映像を観るとセイビアンを使用している様です。

タワー・オブ・パワーを離れてからはセッションワークをこなすようになります。上はその内の一つ。
ドゥービー・ブラザーズ トム・ジョンストンのソロ作「Everything You’ve Heard Is True」(79年)に収録されている「I Can Count On You」。タワー・オブ・パワーにおける様な手数の多いプレイでは
流石にありませんが、ツボを押さえた16ビートファンクグルーヴは彼ならではのもの。
しかしガリバルディはそのままセッションドラマーとして、例えば同じウェストコーストでも
ジェフ・ポーカロやハーヴィー・メイスンといったプレイヤーの様には多くのセッションワークを
残す事はありませんでした。本人曰く、『ポーカロ達の様なドラマーは ”unique vibe” ( ”独特の雰囲気”
みたいな意味かな?と私は思います)を持っていながら、それをOFFにする事も出来る。自分には
それが出来なかった』、と語っています。個性が強すぎるプレイスタイル故に、セッションドラマーと
しては大成出来なかった、また本人にもそこまでして仕事をこなそうという意識もなかったようです。

こうして90年代後半までは、地道なライブ活動や音楽学校での指導に就きます。教則ビデオの制作も
この時期です。そして98年、古巣タワー・オブ・パワーへ復帰します。これ以降の映像はユーチューブで
かなり上がっていますので容易に観ることが出来ます。
しかし、一昨年17年1月に信じられない様なニュースがありました。ガリバルディが列車にはねられた
というものでした。その後詳細が判り、路面電車との事故であったとのことで、バンドメンバーである
もう一人もはねられたそうです。ガリバルディは手術を受けるほどの怪我ではなかったそうですが、
もう一人は一時意識が無い状態だったそうです。インターネットでそのニュースを読んだ時は、
驚きましたが、どうやら演奏に支障が出るような怪我ではなかったようで、18年のライヴ動画を
幾つか確認すると、ちゃんとガリバルディが叩いています。ヨカッタ・・・(*´∀`*)
ベーシストのロッコ・プレスティアは10年代前半辺りから体調不良により、演奏に参加出来ない事が
多いそうです(ちなみに列車事故に遭ったのは代役のベーシスト)。再び二人による鉄壁のリズム
セクションを聴く事が出来るのを願って止みません。

最後にガリバルディとロッコがプレイしている映像を観ながら。98年に催された『Bass Day 1998』に
おける「Oakland Stroke」。ロッコのステージにガリバルディがゲスト参加した際のものです。
タワー・オブ・パワーのステージでは後ろに隠れてしまう二人ですが、この様にフィーチャーされた
映像は極レアです。こういうのを本当の音楽と言うのです。

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