#124 Stevie Wonder

80年代以降のスティーヴィー・ワンダーについて、才能が枯渇してきたなどと無礼な事を
書いた輩がいますが(誰だ!ゴルァ!!━(# ゚Д゚)━・・・・・オメエだよ (´∀` ))、
確かに70年代における異常な程のクオリティーには及ばないにしても、前回のテーマである
「リボン・イン・ザ・スカイ」をはじめとして素晴らしい楽曲はまだまだあります。

「心の愛」(84年)が評論家やスティーヴィー通に評判が悪いのは前回述べた通りですが、
本曲が収録された映画のサントラ「ウーマン・イン・レッド」。やや不確かな情報ですが、
元々はディオンヌ・ワーウィックに話が来ていたものを、ディオンヌがスティーヴィーを
推した為にスティーヴィーによるアルバムとしてでリリースされた作品とされています。
本作でディオンヌがフィーチャーされているのはその様な理由です。
「ウーマン・イン・レッド」から繋がっているのかどうかは判りませんが、85年のNo.1ヒット
「That’s What Friends Are For(愛のハーモニー)」は当初スティーヴィーとディオンヌの
デュエットであったとされています。本曲は初出がロッド・スチュワート(82年)のレコーディング。
85年にチャリティーとして再び世に出る事となります。スティーヴィーの楽曲を紹介すると言って
おきながら何ですが、本曲は言わずと知れたバート・バカラックによる楽曲です。そしてヒットを
確実にする為に共演者を増やそうと提案したのもバカラックであると言われています。
そうした理由でエルトン・ジョン、そして一般的な知名度という点では他三人には及びませんが、
60年代~70年代前半においては米ソウル界でカリスマ的支持を得ていたグラディス・ナイトを
起用することとなったそうです。
甘ったるいだけのバラード、売れ線などと批判はあります。バカラックによる数多の名曲群において、
本曲が上位に入るかというと私もそれは否と断じざるを得ませんが、これだけの実力派シンガーが
一堂に会したというだけでも貴重なナンバーです。ちなみにロッド版も良いですので聴いてみてください。

「リボン・イン・ザ・スカイ」と並んで、80年代以降におけるスティーヴィーの傑作が上の
「Overjoyed」(85年)だと思います。毎度の如く一筋縄ではないコード進行なのですが、
全くそれを感じさせない歌が素晴らしい。「ホッター・ザン・ジュライ」ではやや過剰なアレンジが
感じられる所もありましたが、本曲でのストリングスは見事。これが無ければこの曲足り得なかった
のではないでしょうか。ギターは当時新進気鋭のジャズフュージョン・ギタリストとして頭角を
現しはじめていたアール・クルー。

とかく80年代に入ってからの作品は酷評される事が多いのですが、「リボン・イン・ザ・スカイ」や
「オーヴァージョイド」以外にも素晴らしい曲はまだあります。
上の「With Each Beat of My Heart」はアルバム「Characters」(87年)からの5thシングルとして
世に出ましたが、ポップスチャートではチャートインすらしませんでした。スティーヴィーの楽曲としては
全く陽の目を見ていないナンバーですが、非常に秀逸な曲だと思っています。メインからバッキングまで
全てスティーヴィーの多重録音によるもの。この様なドゥーワップスタイルのナンバーは
スティーヴィーとしては珍しい部類ですが、元々子供の時分にはデトロイトの街角で演っていた
スティーヴィーですから、原点回帰とでも言えるナンバーでしょう。80年代末から90年代にかけて、
新しい世代のソウル・R&Bシンガー達がドゥーワップ・アカペラを取り上げて一大ブームを
巻き起こす事となりますが、丁度そのブレイク前夜とも言える時期であるのも興味深いです。
日本では山下達郎さんや鈴木雅之さん(更に遡ればキングト―ンズ)が大昔から演っていたのは
言わずもがなです。

90年代以降ベスト盤は別として、映画のサントラとライヴ盤を除くとオリジナルアルバムは
「Conversation Peace」(95年」と「A Time to Love」(05年)のみで、一応現在の所は
「タイム・トゥ・ラヴ」が最新作となります。14年も前の作品ですが・・・
スティーヴィー回の一番最初の方でも書きましたが、ポップス界において最も才能に溢れた
人だと思っています。ジミ・ヘンドリックスもいますが彼は機材の扱いを含めたギター演奏に
関しては飛びぬけた天才であった人です。
スティーヴィーよりも作曲及び編曲・器楽演奏・歌といった個々の分野において秀でている
ミュージシャンは勿論いますが、全てが高い次元で完成されていて、そして70年代をはじめとした
異常とも言えるクオリティーの作品をほぼ一人で創りのけてしまった様な偉業を成し遂げた人は、
彼をおいて他にいないのではないでしょうか。彼に匹敵する才能を持った人と言えば同時期においては
エルトン・ジョン、それ以降ではプリンスくらいだったのではないかと私は思っています。

最後はライヴ演奏でも上げて締めたいと思います。「キー・オブ・ライフ」回で有名曲は
取り上げなかったので、「I Wish(回想)」と「Isn’t She Lovely(可愛いアイシャ)」の
メドレーを。08~09年の欧州ツアーにおけるロンドン公演の模様、多分DVDで出ているやつです。
女性コーラス三人の真ん中がおそらくアイシャ、途中でアップになる箇所がありますが凄い美人です。
この頃はまだ声もバリバリ出ていました、数年前のコンサートの模様もユーチューブに上がっていますが、
さすがに声の衰えは如何ともし難いところです。もっともこの人は日本で言う所の人間国宝の様な
人ですから、とにかく少しでも長く現役で活動してくれれば良いのだと私は思っています。

以上で10回に渡って続けてきたスティーヴィー・ワンダー回もこれにて終了です。
まだ例えば、ドラマーであるスティーヴィーについてスポットを当てて書いてみるというのも
面白いかと思ったのですが(一応ドラム教室のブログなんですよ・・・)、それはまた別の機会にて。

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