#139 Harvey Mason_2

数えきれない程のセッションワークで知られるハーヴィー・メイソンですが、前回触れたハービー・
ハンコック「Head Hunters」及びジョージ・ベンソン「Breezin’」の他にも、必ず挙がる
スタジオワークがまだまだあります。

前々回のテーマ「Feel Like Makin’ Love」でも取り上げたリー・リトナー「Gentle Thoughts」。
本作からタイトルナンバーである「Gentle Thoughts」はバウンスする16ビート、
所謂 ”ハネる” リズムが絶品。出だしにおける気持ちの良いビートから、アドリブが白熱するにつれ
ハーヴィーのドラミングも変幻自在となっていきます。かと思えば、また ”ピタッ” とシンプルな
ビートに戻る、リーのギターを中心としたフロントのプレイとのコール&レスポンスが見事です。

デイヴ・グルーシンの「Mountain Dance」(79年)もハーヴィーのキャリアを語る上での鉄板作。
上はタイトルトラックですが、ドラミング自体が非常にテクニカルであるとか、前代未聞の画期的な
フレーズを行っているという訳ではありません。基本的にはシンプルなバッキングに徹しながら、
しかし要所要所で聴かせるフィルイン、印象的な乾いたタムの音色などが ”ハーヴィー節” です。

同作からもう一曲「Rag Bag」。こちらの方がテクニカルであり圧倒されますが、知らずに聴くと
スティーヴ・ガッドかな?と思う程にガッドに似てます。勿論文句の付けようが無いドラミングであり、
しかも本曲はかなり ”ソリ” が仕掛けられている楽曲なので仕方ありませんけれども、
どちらかと言えばハーヴィーの魅力はもう少し自由なプレイにてグルーヴや即興が ”ハジケる”
所だと私は思っています。しかしながらこの様なガチガチにキメキメの曲もやはり見事。
でも少しはガッドを意識したのかな~?とも私は思うのであります・・・

目線を変えてハーヴィーの使用機材について。現在は日本のカノウプスを使用しているようですが、
「Head Hunters」以降の70年代におけるドラムセットはグレッチの様です。米モダン・ドラマー誌の
81年7月号がネットで出てきますが、そのインタビューでイギリスの
プレミアに変えたと語っています。
おそらく80年前後がグレッチとプレミアの境目だと思われますが、「Head Hunters」、「Breezin’」から
「Gentle Thoughts」まではグレッチで、「Mountain Dance」はどちらか微妙なところ、
といった感じでしょうか。80年代半ばからまたグレッチに戻っていますが、セッションによって流動的です。
グレッチの頃は乾いた音色が特徴(特にハイタム)であり、小口径のタム(6~8インチ)は裏ヘッドを
取り外しているモノクロの画像も出てきます。前回あげたカシオペアとのTV共演にてプレミアを使用していますが、そこで聴ける音色は非常に重いもの。ドラムヘッドがCSヘッド(中心部に黒い丸があるもの。
重くてインパクトがあるサウンドが特徴)なので余計にその様な音色になっているのかもしれません。
70年代から80年頃の使用スネアに関してググってみましたが出てきません。この頃だと当然セットと同様にグレッチか、あるいはスリンガーランドのラジオキングやラディックLM400・402あたりでは
ないかと推測されます(でも確かな事はわかりません・・・)。
シンバルは70年代がジルジャン、80年代に入ってからはセイビアンも使い始めた様です。先の81年に
おけるモダン・ドラマー誌においてはジルジャンとセイビアンの混合だと語っています。しかしながら、
これは一流のプレイヤー全てに言える事ですが、どんな機材を使っても自分の音にしてしまうのです。

スタジオワークが素晴らしい事は言うまでもないのですが、ライヴもこれまた凄いのは当たり前。
ジョージ・ベンソンによる77年のライヴ盤にてミリオンセラーとなった「Weekend in L.A.
(メローなロスの週末)」より「Windsong(風の詩)」。最も印象的なのが2:10辺りからの
フィルインです。1拍6連符を用いた(部分的にはその倍の細かい音符も)このフレーズは、
テクニカルである事は勿論ですが、ニュアンスの付け方が超一流。前半はハイハットオープンと
スネアショットにて、口で言えば ” チータタタチ・チータタタチ・チータタタチ・チータタタチ ” と
いった感じ。6連符の一番最後がハイハットなのがニクいです。後半を口で言うと … 言えない・・・
6連を基調にしているのは変わりませんが、出だしのハイハット~スネアからその後のタムへの連打は、
何タムをどの様に叩いているのか???です。ただ一つ言える事は、前半における規則的な
フレーズによる緊張感を、後半の全てを巻き込んでなだれ込む様な連打で解消しているという事。
緊張と緩和、もっと平たく言えばメリハリを付けたフレーズが人の心を打つのです。更に補足すると、
本曲はドラムに関しては超絶フレーズのオンパレードという訳ではなく、比較的地味なバッキングに
徹している為に、先のフィンルインが山場として、余計にドラマティックさを演出されているのです。

ハーヴィー・メイソン回はまだ続きます。

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