#149 A Christmas Gift for you

マーヴィン・ゲイ特集をあと一回残していますが、旬のものでクリスマスにちなんだ回を。
去年の今頃のブログでは ” クリスマス?何それオイシイの?” などとのたまわりましたが、
いくら私でもクリスマスくらいは知ってます。12月24日から25日にかけて
イエス・キリストの誕生を祝うものです。そのクリスマスにはサンタクロースという
空想上の人物がお馴染みですが、ニコラオスという人物をモデルにしたこの者は、
赤い服に白髭といった珍妙な恰好で、しかもトナカイに乗って空中を移動するという常軌を逸した
移動手段を用いて、あろうことか他人の家の煙突から不法侵入し、すやすや眠る健全な
子供たちの枕元に立ち、得体の知れない物品を靴下に忍ばせるという奇行に走ります。
またその日には七面鳥の丸焼きを食する習慣がありますが、その調理工程とは先ず
後肢に綱を掛け頭部を下にして吊るしたら、間髪を入れずに動脈を切断し絶命させ、
その後全身の羽をむしり取り・・・・・・・・・・・ヤメロ!ヽ( ・∀・)ノ┌┛Σ(ノ;`Д´)ノ
という訳で、クリスマスなのでクリスマスソングの特集したらイイんじゃね!、という
斬新な企画を思いつきました … かと言ってマ〇〇ア・キ〇リーとかはよく知りませんし、
ジョン・レノンの「Happy Xmas (War Is Over)」とかもベタ過ぎるので取り上げません
(好きな曲なんですけどね。あの日本人女性の奇妙奇天烈なコーラスが無ければ最高なんですが)。

とっぱじめはダニー・ハサウェイ。#131~135でダニーは取り上げましたが、この曲は今回の為に
あえて外していました(忘れてた訳じゃないですよ。ほ、本当です!… )。70年12月9日に
リリースされた本曲は、アフリカンアメリカンのクリスマスミュージックに関する表現の目的だったとか。
この時期ダニーは(数少ない)私生活が充実していた時期であったそうで、前向きな精神状態で
あったからこそこの様にポジティヴな楽曲が生まれたのかもしれません。しかしその後は・・・・・・・

クリスマスもののアルバムと言えばこれに尽きるのではないでしょうか。「A Christmas Gift for You from Phil Spector」(63年)。残りは本作の曲だけを取り上げてれば今回は済むんじゃねえか?
と言う位にクリスマスアルバムの決定盤です。フィル・スペクターによる当時のフィレスレコードの
面子を集めて制作されたオムニバスアルバムですが、実質はクリスマスソングの名を借りた
フィル・スペクターサウンド、所謂ウォールオブサウンドの極めつけの様な作品。
フィレスの看板ミュージシャン達によって歌われるのは殆どがクリスマススタンダードですが、
楽曲はアレンジ次第というのを改めて教えてくれます。上はロネッツによる「Frosty the Snowman」。
今年他界したL.A.の第一級セッションドラマー ハル・ブレインによるプレイが素晴らしい。
ハシっているのかと思う程ですが、決してテンポは変わっておらず、前へ前へと疾走していく様な
フィーリングは見事です。これはフィルの指示なのかハルのアイデアなのか、どちらだったのか?

お次はボブ・B・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズの「The Bells of St. Mary’s」。本作の中で
最もウォールオブサウンドがさく裂しているトラックではないでしょうか。エンディングの
フェイドアウトにおけるハルのドラミングがやはり素晴らしい。

再びロネッツの「Sleigh Ride」。アフリカンアメリカンによるクリスマスミュージックという
コンセプトという点においては、本曲で完成されているのではないでしょうか。

上はダーレン・ラヴによる二曲「A Marshmallow World」と「Christmas (Baby Please
Come Home)」。素晴らしい歌唱。表舞台では陽の目を見なかったという彼女ですが、
これらのトラックを聴く限りでは信じられません。もっと凡庸なシンガーもどきが売れて
しまっているのがポップミュージックの常ですが、彼女に光るものを見出したフィル・スペクターは
やはり凄い人物だったのでしょう。人間性は別でしたが・・・・・・
今回はあげませんでしたが、彼女はオープニング曲の「ホワイト・クリスマス」も歌っています。

クリスマスアルバムといってフィル・スペクター以外に浮かんだのはこの作品でした、ビーチボーイズ
「The Beach Boys’ Christmas Album」(64年)。約半分がオリジナル、残りはスタンダードという
構成の本作はリリースが64年11月です。65年3月に発売された、「ペットサウンズ」への序章となる
「The Beach Boys Today!」の前作品にあたりますが、録音時期としては同じ時期で被っているものも
あり、「トゥデイ」の片鱗が垣間見える個所もある興味深い作品です。上はオープニング曲である
「Little Saint Nick」ですが、何を隠そう本曲はブライアン・ウィルソンがフィルのクリスマスアルバムにインスパイアされて作ったそうです。
フィルを敬愛し、フィルの様な音楽を目指したブライアンでしたが、はじめて会った時にくそみそに
こき下ろされふさぎ込んでしまったというエピソードはビーチボーイズ回#1をご参照。

カヴァーの中で秀逸なのはエルヴィス・プレスリーで有名な「Blue Christmas」でしょうか。
極上の楽曲、アレンジ、そしてブライアンの歌ですが、内容は「憂鬱なクリスマス」という通り
悲しいもの。ブライアンらしいと言えばそれまでですが・・・・・

本ブログは基本的に英米のロック・ポップス等を取り上げているので、ジャズはごく稀に話の
流れで触れる程度ですが、今回は番外編なのでジャンルに関係なく。
私は神も仏も全く信じていない不信心者ですが、もし歌の神様がこの世に顕現していたとするならば、
それはエラ・フィッツジェラルドに他ならないと思っています。

番外編ですからエラについての詳しい記述は避けますが、ビリー・ホリデイと並ぶ
女性ジャズシンガーの最高峰。エラもクリスマスアルバムを二枚残しています。
「Ella Wishes You a Swinging Christmas」(60年)と「Ella Fitzgerald’s Christmas」(67年)がそれですが、上は前者に収められた「Santa Claus Is Comin’ to Town」。60年と言えば
歴史に残る大名盤「Ella in Berlin」と同年です。この頃のエラの声が張りと成熟味のバランスが取れていて
最も好きです(40~50年代の初々しさも、70年代の円熟味も勿論良いのですが。要は全てイイのです!)。

本作よりもう一曲は「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」。何を歌ってもエラになります。

67年の「Ella Fitzgerald’s Christmas」は前作とは打って変わり荘厳で宗教色の濃い、ある意味で
正統派のクリスマスアルバムとなっています。上は言わずと知れた「Silent Night」ですが、
これほど慈愛に満ち、圧倒的な「Silent Night」は他に思い当たりません。エラの声も60年より少し低めで
落ち着いた感じになっています。7年の間で円熟味が醸し出されてきたのでしょう。

もっと取り上げようかと思っていましたけれども、あっという間にスペースが費やされてしまいました。
結局ダニー・ハサウェイ、フィル・スペクター、ビーチボーイズ、そしてエラ・フィッツジェラルドで
終わってしまいました。しかし音楽の素晴らしさからしてこれで十分ではないでしょうか。

という訳で番外編のクリスマスソング特集はこれにて終わりです。それではみなさん、良いお年を!!!
・・・・・・そこはメリークリスマス!!!、だろ!!!!!ヽ( ・∀・)ノ┌┛Σ(ノ;`Д´)ノ

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