#151 Life in a Northern Town

昨年は一年に渡ってブラックミュージックを取り上げてきましたが、はて、今年はどうしたものか?
と考えあぐねていました。ずっと真っ黒けっけだったので、今度はナマっ白い連中の音楽に
しようかと、極東の島国の黄色いサルは思いましたとさ(こういう書き方しときゃ、差別だとか
ナンとかイチャモンも付けられないでしょ)… 大丈夫だ、誰もこんなブログ見てねえから (´∀` )
。・゚・。・゚・。・゚・。・゚・。・゚・。・゚・・゚・。・゚・。・゚・。・゚・。(ノД`)・゚・。・゚・。・゚・。・゚・。・゚・。・゚・。・゚・。・゚・。・゚・。・゚・。・゚・。

という訳で当面は英米の白人によるロック・ポップスを特集していきたいと思います(特に英)。
寒いこの季節にピッタリかなと思いついたのがこれ。85年11月にリリースされたイギリスのバンド
ドリーム・アカデミーによるデビューシングル「Life in a Northern Town」と本曲が
収録された同月発売の1stアルバム「The Dream Academy」です。ちなみに本国では
シングルは3月にリリースされたそうですが、当時私の耳に入ってきたのは当然米と同じ時期です。
リアルタイムで聴いたので思い入れがあります。その印象的なコーラス、北欧を思わせる
凍り付く様な曲調とサウンドに魅了され(英も北欧も言ったことないけど … )、なけなしの金を
はたいてLPレコードを買い、中三の終わりに聴きまくりました(受験はどうした?・・・・・)。

ニック・レアードを中心とするドリーム・アカデミーのデビュー作は、ピンク・フロイドの
デヴィッド・ギルモアによるプロデュースを受けてリリースされています。ギルモア回#29~30
でも述べた事ですが、ケイト・ブッシュの才能を見出し、いきなり全英No.1へと導いた彼には、
人の才能を見極め、そして引き出す才能もあったようです。

作品を通して主にオーボエでもってヨーロッパ感を漂わせることに寄与しているのは紅一点である
ケイト・セント・ジョンによるもの。アカデミックな音楽教育を受けた才女であり、ニックの作る
楽曲へ更なる彩りを添えています。それが顕著なナンバーが上の「In Places On The Run」。

A面ラストを飾る「This World」はリチャードという人物を主人公に仕立て上げた物語的楽曲。
曲調はそうでもないのですが、かなり救われない内容の歌詞であり、麻薬中毒になったニックの
友人をモデルにしたとかしないとか。

日本版ウィキを引くと彼らについて ”・・・派手な楽曲が主流となっていた時代に、非常にシンプルな
サウンドを展開し異彩を放った ” とあるのですが、あまり的を得ていないと思います。
基本的に80年代的ファッショナブルかつダンサンブルな曲調ではなかったのはその通りですが、
シンプルなサウンドというのには首をかしげます。殆ど全曲に渡ってきちんと練られたアレンジがなされ、
当時における凡庸なロックバンドなどよりよほど複雑かつ高度な音楽を展開しています。そしてさらに派手な
楽曲も収められており、それが上の「Bound to Be」。B面トップを飾る16ビートのジャンプナンバーは
非常に刺激的です。本曲以外でも金属的なベースの音色、ゲートリバーブを効かせたドラム、
シンセの多用など80年代的エッセンスは間違いなく彼らの中にあります。「Life in a Northern Town」の
ヨーロッパ的・牧歌的イメージが強すぎて、おそらくはそんな形容をさせているのかと思われますが
(その「Life in ~」だってよく聴けばとても単純ではなく、一筋縄ではないんですけどね)。
本当の意味でその様な ” 80年代的呪縛 ” から解放された音楽を作る人達が現れるのはもう少し後の事。

「Moving On」も「Life in ~」同様にコーラスが印象的な佳曲。本作はケイトのオーボエ以外にも管楽器が
フィーチャーされています。途中のハモンドオルガンがピンク・フロイド臭を漂わせているのは
やはりギルモアによるものか?シンセや(多分)フレットレスのベース及びその音色などは80年代的です。

少し売れ線狙いかな?とも思いますが、決して嫌いじゃないのが「The Love Parade」。「Life in ~」は
全米チャートで7位、アルバムもTOP20に入るといったイギリスの新人バンドとしては素晴らしい
デビューを飾った彼らでしたが、レコード会社(米ではワーナー)は更なるヒットを期待し本曲を
シングルカットしたそうです、わざわざ米用の別ヴァージョンをこしらえてまで。結果的には
かろうじてTOP40に入る程度と、それほどのヒットとはなりませんでした。上はアルバム版です。

「The Party」も「Life in ~」同様にクラシカルかつ牧歌的楽曲。ストリングスのクレジットは
なされていないのですが、どう考えてもこれは生のストリングスでしょうね。エンディング間際に
本作の収録曲が軽くリプライズされ、コンセプト感を出しています。やはりギルモアの影響か?

アルバムラストの「One Dream」。本作では最もシンプルな楽曲ですが、オブリガードを
奏でるトランペットが印象的であり、やはりきちんと作り込まれているものです。

その後二枚のアルバムをリリースしますがデビュー作程のヒットとはならず91年に解散します。
ニック・レアードという人は才能のあったミュージシャンであったのでしょうが、時代の波に
今一つ乗り切れなかったのかな、と思います。
匂い、味、そして音(音楽)は時間を飛び越えてその当時を思い起こさせる、刷り込みの様な
効果があると言いますが、たしかにドリーム・アカデミーを聴くと、冷え切った部屋で石油ストーブを付け、
かじかんだ手でレコードを取り出しターンテーブルに乗せた35年前の記憶がよみがえります。
昨日食べた昼飯も思い出せなくなってきているのに・・・・・

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です