#213 17-11-70

世の中に定着したイメージが実態とかけ離れているというのはよくある事です。
「素顔のままで」「オネスティ」といった曲の印象が強すぎて、バラードシンガーという
イメージが拭えなかったビリー・ジョエルが、実際はR&Rをこよなく好み、その歌詞も
恋愛ものより厭世観や物語的世界を紡いでいた、というのは以前に書きました。
ちなみに「オネスティ」が本国アメリカではそれほど知られておらず、日本や一部のヨーロッパで
のみ人気があるというのも既述です(#191ご参照)。

エルトン・ジョンも同様に「Your Song」「キャンドル・イン・ザ・ウインド」といった
楽曲の知名度が先行し過ぎて、メロディアスな曲ばかり創る、そして歌うミュージシャンであると
いった偏った印象があります。
もちろんそれらのバラードもエルトンの一面である事は否定しませんが、それはエルトンの音楽性の
中のほんの一部分に過ぎません。
#210にてエルトンの人気は、70年のアメリカツアーにおいて火が点いた事は述べましたが、
その雰囲気を存分に味わえるのが翌71年にリリースしたライヴアルバム「17-11-70」であり、
上はオープニング曲である「Bad Side of the Moon」。

本作はN.Y.のFM局のプログラム用に録音されたものなので、厳密には先に述べたコンサートツアーの
それではないのですが、聴衆を入れたスタジオライヴであり、その緊張感や熱気、また米ツアーの
好評とそれを受けてシングルカットされた「Your Song」がチャートを駆け上がっている最中であって、
上り調子であったエルトンのテンション感も相まって素晴らしいパフォーマンスとなっています。

それを支えているのがバックの面々。前からエルトンを語るうえで欠かせない人物たちがいるという事を
述べてきました。作詞家であるバーニー・トーピン、プロデューサー ガス・ダッジョン、
そしてエルトンバンドのメンバーたちです。特にディー・マレー(b)とナイジェル・オルソン(ds)は
エルトンの黄金期を支えた重要人物です。
本ライヴはエルトン、ディー、ナイジェルによるトリオ演奏です。トリオとは思えない、否、
トリオだからこそのプレイなのかもしれません。重厚かつテンション感に溢れた演奏は、
アメリカで火が点いたことも納得出来る素晴らしいパフォーマンスです。
上は言わずと知れたローリングストーンズの「Honky Tonk Women」。エルトンが筋金入りの
ロックンローラーであることを証明する一曲です。

余談ですが、#186にてビリー・ジョエルの「ニューヨーク物語(Turnstiles)」(76年)は当初
エルトンバンドのメンバーを迎えて録音されたが、ビリーがどうしてもそれに納得せず、
結局ビリーのバンドで録り直したという事に触れました。
音楽というのは不思議なもので、個々のミュージシャンは卓越していても、それで良いものが
仕上がるとは限りません。即興を主とするジャズなどは別ですが、ロックの様な音楽は巧い面子が
揃ったから良い、とはならないのです。
おそらくはディーやナイジェルの演奏の ” 鉄壁さ ” がビリーの望むそれとは違っていたのでしょう。
ビリーはもっと粗削りな音を欲していたのだと思います。
この様に幸福な袂の分かち方も時にはあるのです。
ちなみに本作のタイトルが録音日である70年11月17日に由来する事は言うまでもありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です