#246 Dear Prudence

『瞑想』心を静めて無心になり、何も考えずリラックスし、また神に祈ったり何かに心を集中させ、
目を閉じて深く静かに思いをめぐらすこと。ウィキペディアにおいてはこの様に定義されています。
医学の分野でも一定の科学的根拠が認められているそうですが、私のような煩悩の塊がそれをすると、
「もっとお金が手に入らないかな~」とか「くそ!あのヤロー!!」などと雑念を邪念で煮しめたような
精神状態になる為意味がない、というよりやらない方が良いみたいです・・・・・

「Dear Prudence」はビートルズが68年に発表したアルバム「The Beatles」
(所謂「ホワイトアルバム」)に収録されたジョン・レノンによる楽曲で、ジョン自身もかなり
お気に入りの
一つであったとか。
全くの私見ですが、ビートルズ後期からソロ活動においてジョンの楽曲における作風の傾向で
顕著なものが二つあると思っています。一つはヘヴィーかつブルージー・ソウルフル・ファンキーとでも
形容される様な粘っこい曲調のもの。具体的には「Happiness Is a Warm Gun」「 I Want You
(She’s So Heavy)」「Cold Turkey」「How Do You Sleep?」「Scared」など。
もう一方が「Sun King」「Jealous Guy」「Mind Games」「#9 Dream」において聴くことが
出来る浮遊感とでも呼べる感覚に満たされた楽曲です。「Dear Prudence」はその萌芽と言える一曲。

ビートルズのメンバー達は68年、インド滞在中に瞑想に耽っていましたがその中に Prudence という
ある女優の妹も同行していました。タイトルは彼女についてです。瞑想にはまりすぎたプルーデンスは
部屋から出てこなくなり、皆で ” 出ておいで、プルーデンス ” と呼びかけたそうです。
この出来事がジョンにインスパイアを与えたとされています。勿論この時代のお約束として何らかの
薬物を嗜んでいたのは言うまでもありません(良い子のみんなはマネしちゃダメだぞ!☆(ゝω・)v)。

浮遊感を醸し出すのに最も貢献しているのはイントロ及びアウトロで顕著に聴くことが出来るギターです。
ジョンによる所謂スリーフィンガーと呼ばれる奏法によるもので、これはインドで一緒に瞑想を
学んでいた英フォークシンガー ドノヴァンから教わったとの事。
ポールのベースが印象的なのは衆目の一致する所で、より楽曲の透明感と浮遊感覚を高めています。
途中から出てくる歪んだギターはジョージ。この辺りから透明感を良い意味で濁し始めます。

後半から特にエンディング辺りにおいて、ピアノ・管楽器・パーカッションそしてハンドクラップが
コラージュ的に、陳腐な言い方ですが音のキャンバスに散りばめられた(ばら撒かれた)パートは
圧巻です。ミュジークコンクレートという楽器ではない現実音を組み合わせて作る音楽(?)が、
60年代末からポップミュージックでも取り入れられました。同じホワイトアルバムでもジョンが
「Revolution 9」を収録していますが私はあれを雑音だと思っています(好きな人ゴメンナサイ … )。
それに成功したのはピンクフロイドくらいです(#25ご参照)。
しかし概念としてのミュジークコンクレートを取り入れる事で後期のビートルズ、言うまでもなく
「サージェント・ペパーズ」でロックミュージックを一段高める事へ見事に寄与しています。
本曲はそれを更に推し進めた傑作で、個人的にはホワイトアルバム中のベストトラックと思っています。

ところでドラムについて全く触れませんでしたが、ビートルズファンには言うまでもない事ですけれども
本アルバム制作中にポールがリンゴのプレイに注文を付けすぎて、怒ったリンゴがスタジオから
出て行ってしまい代わりに数曲はポールがドラムを叩いています(温厚でムードメーカーのリンゴですら
こうだったのですから、いかに当時のバンド内の関係が悪かったかを物語るエピソードです)。
本曲もポールによるドラムとされていますが、エンディングで炸裂するドラムは巧すぎるのでこれは
リンゴが戻ってから叩いたのを重ねたのかな?と私は思っているのですが、これもファンの間では侃々諤々
の事柄ですのでそっとしておきましょう … いずれにせよその素晴らしさに変わりはないのですから。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です