前回のテーマである「Nobody Loves You (When You’re Down and Out)(愛の不毛)」が
収録されたジョン・レノンのアルバム「Walls and Bridges(心の壁、愛の橋)」(74年)。
今回は「愛の不毛」以外の曲について触れていきます。
オープニングナンバーは「Going Down on Love」。オノ・ヨーコ氏との所謂『失われた週末』
の序章を歌ったものとか。タイトルや歌詞は性的な意味にも取れるダジャレを内包していて
いかにもジョンらしいもの。しかし楽曲は飄々として、それもまたジョンらしい。
A-②「Whatever Gets You thru the Night(真夜中を突っ走れ)」は#239をご参照。
「Dear Prudence」はビートルズが68年に発表したアルバム「The Beatles」
(所謂「ホワイトアルバム」)に収録されたジョン・レノンによる楽曲で、ジョン自身もかなり
お気に入りの一つであったとか。
全くの私見ですが、ビートルズ後期からソロ活動においてジョンの楽曲における作風の傾向で
顕著なものが二つあると思っています。一つはヘヴィーかつブルージー・ソウルフル・ファンキーとでも
形容される様な粘っこい曲調のもの。具体的には「Happiness Is a Warm Gun」「 I Want You
(She’s So Heavy)」「Cold Turkey」「How Do You Sleep?」「Scared」など。
もう一方が「Sun King」「Jealous Guy」「Mind Games」「#9 Dream」において聴くことが
出来る浮遊感とでも呼べる感覚に満たされた楽曲です。「Dear Prudence」はその萌芽と言える一曲。
#207から一年半に渡りエルトン・ジョンについて書いてきました。
80年代以降も勿論エルトンは活動を続け、既述ですがジョージ・マイケルと共に再び取り上げた
「Don’t Let the Sun Go Down on Me」(91年、#238)、ディズニー映画「ライオンキング」
(94年)、そしてダイアナ妃を追悼する為に再録した「Candle in the Wind」(97年、#228)
などが大ヒットし、常にポップミュージック界のメインストリームに君臨し続けています。
昨年も「The Lockdown Sessions」をリリースし、アルバム・シングル共にTOP10ヒットを
記録しました。
しかしながら80年代以降のエルトンについて引き続き書いていくと、いつ終わるのかな?
それより私のお迎えが先なのでは?などと思ってしまったりして・・・・・
なのでエルトン・ジョンについてはいったん今回にて終了という事で。
機会があればまた取り上げてみたいと思います。
さて … 次回からは ……… 何を書こうか?・・・・・大丈夫だ、誰も期待してねえから … (*´∀`;) …
「Blue Moves」はエルトンが設立したレーベル『ロケットレコード』よりリリースされます。
元々はバンドのギタリスト デイヴィー・ジョンストンのソロアルバムを創るために新たなレーベルを
興そうとしたのが始まり、とどこかで読んだ記憶があるのですが間違っていたらご勘弁を・・・
クリフ・リチャードやニール・セダカといったビッグネームと契約し、勿論エルトンとゆかりのある
デイヴィーやキキ・ディーといったミュージシャン達を擁しました。
エルトン自身のレコードを出すためのレーベルではなく、若手に作品を出させる機会を与えるのが
目的であったと言われています。ただ当然ゆくゆくは自分の作品も、という思惑も無かった訳では
ないでしょう。
上はゴスペル風味のⅮ-①「Where’s the Shoorah?」。あ!あと書き忘れるところでしたが、
一番上の動画は本作からのヒットシングル「Sorry Seems to Be the Hardest Word」です。
本作については二枚組にして冗長になってしまったのではないか?一枚にまとめればもっと良かったのに?
などという声が散見されます。たしかに私もそう思わなくもありません。しかし、自身によるレーベルからの初リリースという事もあり、エルトンの意気込みもかなりのものだったのでしょう。
彼の様な天才には好きにさせておく方が良いのです。そういう表現者は稀にしかいないのですから。
上はラストを飾る「Bite Your Lip (Get Up and Dance!)」。エンディングにふさわしいまさしく
大円団といったナンバー。もう一つは何度も出てきますが80年のセントラルパークにおけるプレイ。
ディー・マレー(b)とナイジェル・オルソン(ds)も戻ってきています。仲直りしたんですかね?
そう、” 仲良きことは裁判より美しき哉 ” ですよ。あっ!うまいこと言っちゃったかな?(*´▽`*)
いや、全然うまくないよ (´・ω・`) ・・・・・
エルトン・ジョンが75年10月に発表したアルバム「Rock of the Westies」。前作に引き続き ビルボードのアルバムチャートで初登場1位となります。ちなみにエルトンのオリジナルアルバムで
1位となったのは本作が最後です(94年にディズニー「ライオンキング」のサントラがチャートの
トップになっていますがあれは企画ものなので)。上はオープニング曲である「Medley: Yell Help / Wednesday Night / Ugly」。
同年9月には「Rock of the Westies」よりの先行シングル「Island Girl」がこれまた1位に。
この頃はNo.1が当たり前になっています。
しかしながらエルトンについて語られる時、よく言われるのが本作「Rock of the Westies」より
作品のクオリティーが落ちてきた、という事です。私個人的にもそう思います。先述の「Island Girl」
などは数多あるエルトンの名曲群においてそれほどのものとは思えません。もっともNo.1ヒットしたものが
必ず優れた曲かと言えば、そうではない事は言わずもがな・・・・・
とは言ってもそこはエルトン。凡百のミュージシャンとは訳が違います。A-⑤「I Feel Like a Bullet
(In the Gun of Robert Ford)」とB-①「Street Kids」は本作における秀逸なナンバー。
前者はエルトンらしい陰影に富んだスローナンバー。後者は3rdアルバム辺りに立ち返ったかのような
活きの良いロックチューン。エルトン・ジョンと言えば「ユアソング」「キャンドル・イン・ザ・ウインド」といったバラードや、「タイニーダンサー」「ロケットマン」などの壮大かつ深淵な楽曲、あるいは
「クロコダイルロック」の様にポップなR&Rが一般的な印象でしょうが、私はある意味本曲の様な
少し泥臭いロックナンバーがエルトンの真骨頂なのではないかと思っています。
エルトン・ジョンが75年に発表したアルバム「Captain Fantastic and the Brown Dirt Cowboy」は
米ビルボードにおいて史上始めて初登場1位となった作品です。この辺りからも当時における
エルトンの人気っぷりが伺えるでしょう。
タイトル曲はエルトンお得意のカントリーテイスト。勿論作詞家 バーニー・トーピンが西部開拓期マニアで
あったのも既述の事。しかしただのカントリー&ウェスタンに終始していないのは一聴瞭然。
本作はアルバム全体がストーリーに沿って構成され楽曲が収録されている所謂トータルコンセプトアルバム
です。都会っ子であるキャプテン・ファンタスティックと田舎育ちでわんぱくなブラウン・ダート・
カウボーイが出会い、チームを組んで成功を夢見るというのがタイトル曲の内容であり、つまり
エルトンとバーニーを歌っているわけです。
しかし当然ながらすぐには上手くいかず、それでも前に向かって進まなければならない、というのが
A-②「Tower of Babel」とA-③「Bitter Fingers」。
本作の録音は前年である74年の夏とされています。この時期は前回のテーマであったジョン・レノンとの
共演やコンサートツアー、翌75年は引き続いてのツアーに加えて映画「トミー」への出演及び同サントラ内に
収録された「ピンボールの魔術師」の制作、そして本作のプロモーションは勿論の事、10月にはL.A.の
ドジャースタジアムにおいて『エルトン・ジョン・ウィーク』と題された7日間に渡る大規模公演を催し、
それはのべ10万人を動員しました。
A-④「Tell Me When the Whistle Blows」はソウルテイストとよく評されます。たしかに間違い
ありませんし私もそう思いますが、さらにジョンの、特に「ウォールズ・アンド・ブリッジ」辺りの作風に
影響を受けたのかな?と感じます。
A-⑤「Someone Saved My Life Tonight」は唯一のシングルカット曲(米4位・英22位)。
本曲の邦題が誤訳であるのはよく語られる事。興味のある方はググれカ ………… 検索してね ♪
B-①「Meal Ticket」はサイドが変わって一変して力強いロックチューン。どん底ではあるが何とか契約をもぎ取ろうという前向きな内容。
B-②「Better Off Dead」の邦題は「僕に迫る自殺の誘惑」ですが、歌詞はそこまで悲惨ではないらしいです。
アルバムの最後を飾る「We All Fall in Love Sometimes」と「Curtains」はメドレーです。
前者は物悲しい楽曲。タイトルの恋に落ちる、ですがその ” 恋 ” の対象は異性というより
命を懸けて成し遂げようとするもの、つまり彼らの場合は音楽活動・創作活動を表しているのでは?
エルトンとバーニーに恋愛関係があったかどうかは諸説ありますが、それをあれこれ推測しても
ナンセンスなのでしません。恋愛感情があったのか、それとも人間として友としての愛情だったのか、
どちらにしてバーニーが特別な存在であった事に間違いはありません。無論バーニーにとっての
エルトンもまた然り。
後者は成功を収めた今、昔を振り返り、思い出に浸りながら幕を閉じる、という内容です。