#195 It’s Still Rock and Roll to Me

ビリー・ジョエルが80年にリリースしたアルバム「Glass Houses」についてその2。
R&Rナンバーが二曲続いた後に少し箸休め的なナンバーである「Don’t Ask Me Why」。本作からの第三弾シングルである本曲は全米19位というヒットを記録しましたが、一つ前のシングル「It’s Still Rock and Roll to Me」がビリー初の全米No.1となったのでその陰に霞みがちです。しかしライヴでは必ず披露される定番曲だったらしくファンの間では人気のナンバーです。アコギの軽やかな印象によってロックンロール色が薄いように感じてしまいますが、そこはどうして、ボ・ディドリーばりの所謂ジャングルビートでしっかりと ” ロック ” しています。

画質は最悪ですが84年のビリーが乗りに乗っていた頃の模様が上の動画。本曲はジャングルビートと共にラテンビートも併せ持っています。ロックンローラーはラテンも好みます。初期のビートルズが良い例です。会場との一体感が伝わる貴重な映像です。

先述の通りビリーにとって初の全米No.1シングルとなった「It’s Still Rock and Roll to Me」。批判を顧みず率直に言えば、ビリーによる数多の名曲の中において本曲は突出した楽曲ではありません。ですけれども、ディスコの潮流がまだ蔓延り、さらにニューウェイヴが台頭しつつあった80年初頭において、こんなド直球のロックンロールナンバーが天下を取ったのは奇跡です。言い替えればビリーの人気・勢いが時代を凌駕したのです。誤解を恐れず言うとこの時点でビリーは何を演っても成功したと言う事が出来、それは良い意味における強者の特権でしょう。ポール・マッカートニーですらこれほどの勢いはありませんでしたから。

A面ラストの「All for Leyna」。アルバム発売に先駆けてイギリスのみでシングルカットされました。曲中の主人公が一夜限りの関係を持った女性にやがてのめり込んでいくという内容。イントロにおけるピアノの連打が翌年のホール&オーツによる大ヒット「キッス・オン・マイ・リスト」(#57ご参照)と似ているな?影響を与えたのかな? と思っていましたが、よく考えたらホール&オーツのアルバム「モダン・ヴォイス」は80年7月のリリースで「Glass Houses」の4カ月後。「キッス・オン・マイ・リスト」は随分時間が経ってからリリースされ、爆発的にヒットしてホール&オーツ第二次黄金期の礎を築いた曲でした。
「モダン・ヴォイス」もプログレ、ハードロック、ニューウェイヴと色々チャレンジしてきたホール&オーツが、彼らのルーツであるソウル・R&B・R&R・ドゥーワップといった音楽へ原点回帰した作品でした(ただし全部が全部という訳ではなく)。時代を極めたビリーが商業性を(あまり)気にせず行う事が出来たのに対して、ホール&オーツは「リッチガール」(77年)以来ヒットから遠ざかっていました。対照的な両者達が選んだ方向性が原点回帰、というのも興味深いものです。

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