前々回にジェフ・ベックが他のミュージシャンへ客演したものだけを取り上げたらオモシロイんじゃね?と思いついたのですけれども・・・・・思いつきを実行いたします。
先ずはスティーヴィー・ワンダー「Lookin’ for Another Pure Love」(72年)。あまりにも有名なスティーヴィー黄金期の幕開けを飾ったアルバム「Talking Book」に収録された本ナンバーは収録曲の中では地味な存在ではありますが、そんな曲であってさえこのクオリティーの高さというのがこの時期におけるスティーヴィーの凄さ(異常さ?)がうかがい知れます。
” ジェフ節満開!” といった感じのソロですが、その後のオブリガートもジェフならでは。人によっては「歌の邪魔だ!」と怒る人もいるかもしれませんけれども、それでも許されるのはジェフ・ベックだから。それ以外に理由はありません。「迷信」にまつわるエピソードは何度も触れてますのでここでも割愛(#117ご参照)。
記録にある限りジェフが客演したもので一番古いものが上のドノヴァン「Trudi」(69年)。ロン・ウッドとジョン・ポール・ジョーンズ、そしてコーラスでロッド・スチュワートも参加していることから、要は第一期ジェフ・ベック・グループ関係者総出でアルバムに加担した(言い方が悪いな … )という事。ちなみにニッキー・ホプキンスも参加しているのでこの辺りで知り合ったのかな?と。ホプキンスは売れっ子のセッションプレイヤーであちこち引っ張りだこでしたから至る所で顔を会わせていても不思議ではありませんが。
ジェフのプレイ自体はそれほど特筆すべきものではありません。
お次は有名どころでスタンリー・クラーク「Hello Jeff」(75年)。アルバム「Journey To Love」ではタイトルトラックと本曲の2曲に参加しています。題名から伺える通りジェフをフィーチャーした曲であることは言わずもがな。
以前も書きましたが、ジェフの凄いところは技術的には敵わないジャズ・フュージョンの猛者たちにも決して気後れすることなく自分のプレイを貫いている所です。誤解の無いように言っておきますけれどもジェフが決して進歩しなかったという事ではありません。アルバム「Blow by Blow」から始まるインストゥルメンタル及びクロスオーバー的な音楽を演るにあたってジェフは相当練習したそうです。マックス・ミドルトンに影響また力を借りてジャズ的なアプローチを学んだと言われています。
しかし根っこの部分では変わっておらず、速く・複雑・そして正確にというテクニック面では及ばないプレイヤー達に対しても、自分のスタイルを変えることなく真っ向勝負を挑んでいました。ジェフがジャズ界のプレイヤー達から愛された理由はその辺りにあるのではないかと私は思っています。
ミック・ジャガー「She’s the Boss」(85年)のオープニングナンバーである「Lonely at the Top」。
本曲は#75でも取り上げていますが久しぶりに聴いてもカッコイイ・・・・
本作でジェフはかなり弾いていますがもう一曲だけタイトル曲を。
ジェフがローリング・ストーンズに加入していたかもしれない、というのも有名なエピソードで#75でも触れているので詳しくは書きませんけれども、やはり参加せずに良かったと思います。その時目指していた音楽性の違いなど理由はあったようですが、どう考えてもキース・リチャーズとジェフがうまくやっていけたとは思えませんので・・・・・
セッションミュージシャンはプロデューサーやアレンジャーの要求に答えつつ、しかも一流のプレイヤーはその中でも自分の色を、良い意味で爪痕を残してその地位を築いていきます。それに対してジェフに仕事を依頼した人達ははなから ” ジェフ・ベックの音とフレーズ ” が欲しくてラブコールを送っていたのです。この様なギタリストは他に何人いるでしょうか?失礼を承知で言えば超絶テクニックを期待して仕事をオーダーした訳では決してありません。そういうプレイが必要であれば別のギタリストが相当数います。
これはジェフがギターでもって自分の歌(声)を表現したプレイヤーだったからでしょう。お世辞にも歌は上手くなかったジェフだったからこその事です。コーラスシンガーでとても上手い人たちは大勢いるでしょうが、この曲には是が非でもあのシンガーの声が必要なんだ!というのと同じです。人間の歌(声)ほど同じくプレイ出来ない楽器は他に無いのですから。