エイジアやフォリナー回にて何気にスーパーグループという言葉を使いましたが、調べてみると現在では死語になっているそうです。…知らなかった…
(゚Å゚;)━?!
既に実績・知名度のあるミュージシャンやバンドに在籍していた人たちが結成したバンド、というような意味合いで、私のようなオッサン世代では普通に使っていた言葉ですが、80年代辺りを境にこの呼称はあまり好ましい言い方としては使われなくなっていったとの事です。古くはクリーム(エリック・クラプトン回#8ご参照)、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング、そしてエイジアあたりが最も有名なところだったかと思います。
私のリアルタイムだった80年代、エイジア以外でもスーパーグループと呼ばれたバンドはありました。まずはパワー・ステーション。飛ぶ鳥を落とす勢いだったデュラン・デュランのジョン・テイラー(b)と、アンディ・テイラー(g)が長年尊敬していたシンガー ロバート・パーマーと結成したバンド。
当時アイドルバンド的な扱いをされる感が否めなかったデュラン・デュランですが、ジョンとアンディはそれを嫌っていたのか、もっと硬派なロック・ファンクを演りたいと願ったのがきっかけとか。プロデュースは「Le Freak(おしゃれフリーク)」(←しかしこの邦題は何とかならなかったのか…)等のヒットで知られるシックのバーナード・エドワーズ。そのつながりでドラムはトニー・トンプソンに。
それ以前は所謂”Musician’s Musician”、玄人受けの存在であったロバート・パーマーを表舞台へ引っ張り出したジョンとアンディの目論見は見事に当たりました。上記の1stシングル「Some Like It Hot」を含むアルバム「The Power Station」(85年)は米で6位の大ヒット。2曲のTOP10シングルを輩出し大成功を収めます。またアイズレー・ブラザーズの「Harvest ForThe World」やT・レックス「Get It On」のカヴァーも話題となりました。”大人の男のフェロモン”がプンプンするような苦み走ったパーマーのヴォーカルは今聴いても惹きつけられます。その後にリリースしたソロアルバム「Riptide」(85年)からは全米No.1シングル「Addicted To Love(恋におぼれて)」を生み出し、その印象的なPVも含めて大ヒットし、グラミー賞を受賞する事となります。
トニー・トンプソンのドラムも一度聴いたら忘れられないグルーヴと音色です。黒人のうねるリズムと言うのはこういうビートを指すのでしょう。念の為言っときますが生音でこんなドラムの音はしません。サウンドエフェクトがあってはじめてあの様な音になります。具体的にはゲートリバーヴとフランジャー、あとは気合(?)でしょうか… 本作からもう一曲「Communication」。
エイジア以降で最も話題になった大物同士の組み合わせと言えばこれに尽きるのではないでしょうか。ハニードリッパーズ「Volume One」(84年)。レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジとロバート・プラント、ジェフ・ベック、シックのナイル・ロジャースという顔ぶれで、よくぞこれだけの面子を揃えたものだと思いますが、それもそのはず、このバンドは当時のアトランティックレコードの社長が自身の好きな50’sの曲でレコードを作りたいと企んだのが始まり。ハニードリッパーズというのは元々はプラントがツェッペリン解散以降に率いていたバンド名だったのですが、このバンドが50’sのスタンダードを演っているのを知っていた社長が、これだけのビッグネームを集めて企画モノとしてプラントのバンド名義にてミニアルバムを作らせた、という事情だったようです。ツェッペリンやジェフ・ベックらしい音楽を期待して聴いたら肩透かしを喰います。コンセプトがオールディーズを楽しんで演ろう、という様なものなので当然でしょう。
奇しくも最初のパワー・ステーションと同様にシックのメンバーが関わっていますが、70年代におけるファンク・ディスコミュージックの立役者であった彼らが、80年代に入って一世を風靡したヒップホップ、ダンサンブルな音楽の形成に最前線で寄与した事が、特に80年代前半~半ばにかけて皆がこぞって彼らの力を借りようとした為のようです。もっともハニードリッパーズは決してファンクやヒップホップの要素があるとは思えませんが、それが時代の流れだったのでしょう。
フィル・フィリップスによる59年の大ヒットナンバー「Sea of Love」。ハニードリッパーズ版も85年に全米3位の大ヒットを記録します。プラントのツェッペリン解散後における最大のヒットとなったのですが、実はこれが彼にとってジレンマだったようです。本曲の様な甘い曲を得意とするシンガー、とイメージが定着することを恐れたとのことです。
意外と目立たない事ですが、実は本作に参加しているドラマーは現在ではジャズ・フュージョンドラマーの大御所デイヴ・ウェックルです。当時は新進気鋭のN.Y.若手セッションドラマーとして、オマー・ハキム、デニス・チェンバース達と共に、スティーヴ・ガッドなどの次世代を担うドラマーの一人でした。先述の通りオールディーズのカヴァーなので、超絶テクニックなどを聴くことは出来ませんが、シンプルながらツボを押さえた演奏は見事。一流の人はシンプルなのをプレイしてもやはり一流です。
エイジア回でも述べた事ですが、スーパーグループというのは企画モノの側面があり、またビッグネーム同士でエゴのぶつかり合いになる事が少なくない為、短命で終わることが常です。ハニードリッパーズは始めから単発の企画だった様なので当然ですが、パワー・ステーションも上記のアルバム1枚でいったん解散してしまいます(96年に再結成し、アルバムをリリース)。
演奏者の力量に因る部分が大きい即興演奏主体のジャズ・フュージョンは別として、それ以外のポピュラーミュージックについては演奏技術に秀でたメンバー同士が集まったから優れた音楽が出来るとは限りませんし、また卓越した作曲・編曲能力を持つものが組んで曲を作れば必ず名曲が作られるかという訳でもありません。スティーヴィー・ワンダーとエルトン・ジョンが共に作曲すればこの世のものとは思えない素晴らしい楽曲が生まれるものでもないでしょう。むしろ”船頭多くして船山に登る”になってしまう事の方が多いのかも。スーパーグループがやがてロック・ポップス界から姿を消していったのも、そのような理由からだったのかもしれません。