#106 I Feel for You

82年、チャカ・カーンは全編ジャズナンバーのアルバム「Echoes of an Era」をリリースします。
フレディ・ハバード、チック・コリアといったジャズ界の大物達に支えられた本作は、人によって
賛否両論ではあるようですが、チャカのあらゆるジャンルに挑戦していこうという姿勢の表れだった
のではないでしょうか。本作のみワーナーではなくエレクトラから発売されています。
同年暮れには5thアルバム「Chaka Khan」を発表。ますますダンサンブルなエレクトリックファンク
が際立つ様になりました。個人的にはこの手の音楽は決して好みではありませんが、80年代初頭は
猫も杓子もこういった音楽性・サウンドだったので、一概にこの時期のチャカを否定する気はありません。
ダンサンブルな楽曲以外はというと、これも当時の音楽シーンを席巻していた、ジャズフュージョン的な
コンテンポラリーR&B、所謂ブラックコンテンポラリー ”ブラコン” でした。

84年、アルバム「I Feel for You」をリリース。先行シングルであるタイトル曲がチャートを駆け上がり、
彼女のキャリアにおいて最大のヒットとなったのは前々回にて触れた通り(ポップス3位・R&B1位)。
プリンスによる本曲は、元は彼の2ndアルバムに収録されたもの(#49~51ご参照)。チャカの前にも
ポインター・シスターズが取り上げたりもしていたようですが、世間に知られる様になったのはチャカの
ヒットによるものでしょう。冒頭がラップで始まる本曲は、世間に ”ラップ” というものが浸透していった
最初期の楽曲だったのではないでしょうか。ハーモニカはスティービー・ワンダー、
一発でわかります。

本作からもう一つのシングルヒットである「Through the Fire」。日本でもTVなどで使用された
覚えがあるのでお馴染みなのでは。上は本曲の作曲者であるデイヴィッド・フォスターによる、
10年にラスベガスで行われたフォスター&フレンズにおけるコンサートより。本コンサートでは
他にもフィリップ・ベイリー、ケニー・ロギンス、ドナ・サマーなどの豪華ゲストが出演しています。
映像を見る限りドラムはジョン・ロビンソン(ルーファスに在籍していたのでチャカとは旧知)、
ベースは世界で一番忙しいベーシスト ネイザン・イースト、後は特定出来ませんでした…
アルバム「I Feel for You」は米でプラチナディスク、英でもゴールドディスクを獲得。
チャカのキャリアにおいて、商業的には頂点を極めた時期と言って良いでしょう。

ゲストヴォーカルとしても様々なレコーディングに引っ張りだこのチャカでしたが、その中でも
最大のヒットはこれでしょう。スティーヴ・ウィンウッド、86年の全米No.1ヒット「
Higher Love」。
ウィンウッドにとっても最大のヒットとなったアルバム「Back in the High Life」からのシングル曲。
ウィンウッドはアイランドレーベル、チャカはワーナーでしたが、レコード会社の垣根を越えた
デュエットの実現でした。

その後のR&Bシーン(90年代以降のR&Bは、従前のそれとはだいぶ音楽性が変わりましたが)において、
特に黒人女性シンガーの歌唱スタイルと言えば、チャカの様なものがスタンダードになったのでは
ないかと思います。ただし裏を返せば、皆金太郎飴の様になってしまう、と言った側面も
ありますが … しかし、だれでも最初は人の真似から始まるので、一概に否定は出来ません。
チャカだって、アレサ・フランクリンなどの先達をコピーする所から始まったのでしょうから。

最後にこぼれ話を一つ。ティナ・ターナー回(#103)でも触れた曲ですが、86年のロバート・パーマー
によるNo.1ヒット「Addicted To Love」、実はこれにチャカが参加するはずだったという事。
先述の通り、チャカはワーナー、パーマーはウィンウッドと同じくアイランドでしたが、この時は
ワーナー側が許可しなかったらしいのです(「Addicted To Love」のレコーディングは85年中)。
これまたトリビア的な話ですが、何故か本曲が収録されたアルバム「Riptide」のライナーノーツには
チャカの名がクレジットされています(大人の事情でしょうか?)。「Addicted To Love」は
確かにパーマーと、
おそらくは黒人女性であろうシンガーの掛け合いを聴く事が出来ます。
ボンヤリして聴くとチャカに聴こえなくもない感じですが … まあ違います。
(あっ!あれですね (*゚▽゚)!!例えれば『某アイドル(似の娘)がついに!×××で△△△しちゃって!!』みたいな〇Vを、薄目で見れば本人に見えてくる、的なやつ … ちがうがな!!!( °∀ °c彡))Д´)… )
・・・・・が、その後ワーナーもようやく許したらしく、翌年にはウィンウッドとの共演が実現し、
先の通りの大ヒットとなった訳です。ちなみにパーマーは98年のチャカのアルバムに参加しています。

この三人が出演しているコンサートがあります(三人で同時にステージに上がっている訳ではないですが)。
97年8月、ロンドンの有名なウェンブリーアリーナにて行われた『カールスバーグ・コンサート』。
念のためカールスバーグとはあの有名なデンマークのビールメーカー。そう言えばしばらく飲んでないな … どんな味だったっけ?・・・・・失礼 … もとい、ロッド・スチュワートなども出演したかなり大掛かりな
コンサートだったようです。まず、チャカとパーマーによる「サティスファクション」。言うまでもなく
ローリング・ストーンズの代表曲。そしてマーサ&ザ・ヴァンデラスの「Dancing in the Street」の
イントロが流れる中を一度二人は袖にはけ、お次にウィンウッドが登場。前半は一人で歌いますが、
途中からチャカが再登場し、ウィンウッドともデュエット。一つ目の動画などはかなり画質が悪いですが
(アップしてくれた人ゴメンなさい)、「Addicted To Love」で実現されなかったソウルフルな
掛け合いを目の当たりにする事が出来ます。チャカとウィンウッドの共演も言うまでもなく素晴らしい。
余談ですけども演奏屋の性で(あっ!念のため言っときますが、この ”性”  は「セイ」じゃなくって
「サガ」って読むんですよ (*゚▽゚)!。
やだなあ~!すぐエッチな方に・・・( °∀ °c彡))Д´)…)
ついバックのメンツを探ってしまいますが、ドラムは超絶テクニックを誇るヴィニー・カリウタ、
シンプルなエイトビートを演ってもやはり超一流です。ベースはこれまたネイザン・イースト、
この人いつ寝てるんでしょう?・・・

英国を代表するアリーナで、アメリカ人とイギリス人が双方の国の楽曲を共に歌う。
政治・経済などの他の分野では、この二国が無条件で良好な関係か否かはわかりませんが、
少なくともポップ・ミュージックの分野では良い関係の様です。それはお互いが、相手の音楽に
尊敬と敬意を持っているからに他なりません。
なにかと言えばイチャモンばかりつけてくる国々とは大違いで・・・(あっ!余計な事を!!(#゚Д゚))
・・・・・架空の国ですよ、私の頭の中にあるだけの夢物語です。・・・・・

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です