#161 Peter Gabriel

86年のアルバム「So」にて大成功を収めたピーター・ガブリエルは、92年に「Us」を発表します。
上はオープニング曲である「Come Talk to Me」。パーカッションなどには相変わらずの
アフリカン・ラテンのテイストが感じられますが、本曲ではバグパイプなど欧州独自の楽器も
使われており、もはや多国籍を通り越して無国籍といった感じです。原点回帰であるのかも。

厳密には「So」と「Us」の間にはサントラである「Passion」(89年)と、ベスト盤の
「Shaking the Tree: Sixteen Golden Greats」(90年)がリリースされています。
「Passion」はマーティン・スコセッシ監督という映画オンチの私でもその名を聞いた事が
ある人による『最後の誘惑』という作品の為のもの。映画の内容も物議を醸しだしたそうですが、
「Passion」の方もかなり難解な音楽性です。それでも一度火が付いた人気というのは凄いもので、
その様な内容にも関わらず米でゴールドディスクを獲得しています。
ベスト盤の方は選曲に関して無難な内容であると個人的には思っています。そのせいか否かは
分かりませんがこれまた大ヒットし、米でのダブルプラチナ(200万枚以上)をはじめとして
各国でプラチナ・ゴールドに認定されました。
上の動画は94年のライヴアルバム「Secret World Live」における「Digging in the Dirt」
(アルバム「Us」より)です。ジェネシス時代からその独創的なステージアクトによりコンサートにおいて
カルトな人気を誇っていたピーターでしたが、それはやはり大多数による支持ではありませんでした。
本作においてようやく永い年月をかけてピーターのパフォーマンスが世に認められました。
ジェネシス時代やソロ初期におけるシュールなメイク・コスチュームなどは影を潜めましたが、
その精神は間違いなく本作でも息づいています。百聞は一見に如かずなので上の動画はもとより、
全ての映像がユーチューブで上がっていますので興味のある方は是非。
本作はレコード・CDとしても米でゴールドに認定されていますが、映像パッケージ(VHS・LD・
DVD等)で98年にゴールド、06年にはプラチナを獲得しています。私は音楽の映像モノというのには
あまり詳しくないのですが、プラチナに認定される作品というのは決して多くないようです。
マイケル・ジャクソンやマドンナといった人達なら普通にそれくらい売っているのでしょうが、
ピーターのライヴ映像がここまで世に受け入れられるというのは永年のファンとしては感慨深いものです。
本作からもう一曲。4thアルバムに収録されている「San Jacinto」。アルバムには未収録です。

夢は必ず叶うとか努力はきっと報われるといった無責任な物言いを私は全く信じていません。
そしてピーターもこれだけの才能に恵まれながら世間に認められないまま終わっていたとしても
おかしくなかった一人であるという事は前回も書きました。またジェネシス初期やソロ活動の
当初におけるあまりにも独創的な音楽性やステージアクトが、決して理解されなくても構わないという
自己満足的なものではなく、むしろ自分の創造精神を理解して欲しいが為に行った故の事であるという事も
これまで述べてきました(子供時代における彼独自の ” サービス精神 ” など)。
キワモノ的扱いを受けてきたピーターは、ジェネシスでのデビューから86年の「So」における
世界的成功まで15年以上に渡って栄華とは無縁の存在でした。それが「So」以降は独創的ミュージシャン、
ワンアンドオンリーの創造者という180度変わった評価を受ける事となります、世間は勝手ですね …
ありきたりな言い方になりますがこの成功は決して信念を曲げなかったからでしょう。多少のポップ化、
悪く言えば世間への迎合はありましたが(それでも「スレッジハンマー」の ” あのPV ” ですが …)、
世間を・時代を自分の方へ引き寄せた稀有なミュージシャンです。

ピーター・ガブリエルは勿論の事、ジェネシスも三人で一応存続しています。あと#158でうっかり
書き忘れたのですが、86年におけるピーターとジェネシスによる同時期の大ヒットの陰で
忘れ去られがちですが、ジェネシスの元ギタリスト スティーヴ・ハケットもこれまたプログレ界の
スーパーギタリスト スティーヴ・ハウと共に結成したバンド「GTR」(アルバムタイトルも同)が
これまた同年にアルバム・シングルともにTOP20入りするという、まさしくこの年は
” ジェネシス年 ” だった訳です。ハケットも現役で活動しています。
上でジェネシスが  ”一応 ” 存続と書きましたが、洋楽通ならご存じでしょうけれどもフィル・コリンズが
かなり前から心身ともにあまり良い状態ではなくなっています。脊髄をおかしくし、そのせいで手が
思うように動かずミュージシャンとしては致命的な身体の状態となってしまいます。
また80年代は世界一忙しい男との異名を取った程ワーカホリックな人でしたが、その反動や病気が
影響したのか老年性の鬱病を発症してしまいます。これまで何度も引退とカムバックを繰り返して宣言し、
口の悪い輩からはビリー・ジョエルと共に引退するする詐欺などと失礼な言われ方をされてきました。

以上でピーター・ガブリエル特集は終わりです。9回にも渡ってしまいましたが、思い入れのある
ミュージシャンなのでこれでも書き足りない程です。出来るだけ客観的に綴ったつもりですが、
ピーター・ガブリエルをよく知らない方々にはどう映ったでしょうか?
本ブログにて多少でも興味を持って頂ければ幸いです。

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