#162 Phil Collins

前回の最後にてフィル・コリンズについて触れました。ピーター・ガブリエル特集のラストなのに
何故フィルの事を?と思われた方もいるかもしれません。そう、貴方は鋭い。今回からの伏線でした。
一人くらいは気づいた方いますよね? … いるんじゃないかな … いたらイイな …… イテクダサイ ………
あなたバカなの~?誰もこんなブログ見てないわよ~!おーほっほっほーーー!!! J( ゚∀゚)しo彡゚
イヤーーー!!!ヤメテーーー!!! 0(*>д<*)0=・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

という訳で、これからしばらくはフィル・コリンズ特集です。ただしフィルの場合はシンガー・
コンポーザーとして、
またドラマーとしての側面と大きく分けて二つについて論じる必要があります。
どちらかに的を絞ろうかと思いましたが、せっかくなので両面について書いていきます。
であるからして、本特集もかなり長くなります。
フィル・コリンズなのに何故にいきなりシュールな動画のサムネが?と思われる方もおられるでしょうが
別に間違ってはいません。フィルのミュージシャンとしてのキャリアはジェネシスにドラマーとして
加入したところから始まります。ジェネシス回#22~24にて触れた事ですが、ジェネシスは貴族の子弟が
作ったバンドです。しかしそれはオリジナルメンバーの事。後から入ったフィルとギターのスティーヴ・
ハケットは一般階級の出でした。
80年代における彼のドラミングしか知らない層にとって、この頃のプレイはかなり刺激的でしょう。
当時の英プログレッシブロックの多くがそうであった様に、ジェネシスの音楽もかなり複雑で尚且つ
テクニカルです。当然フィルのプレイもそれに沿ったものであり、彼はそれを表現できる卓越した
技術を持つドラマーでした。#22で書いた事ですが、80年代の人気絶頂期に来日公演にて
女子大生風の(おそらく)にわかファンが ” フィルってドラムも叩けるのね~www ” と
のたわまったのは都市伝説、と思いきや、難波弘之さんが彼女達の隣で聞いていたという事も
#22で述べた話。”ドラムも ” ではなく ” ドラムが ” 本職のミュージシャンなのです。
上は初期ジェネシスの名盤「Foxtrot」(72年)におけるオープニング曲「Watcher of the Skies」。
出だしにおけるメロトロンの音色でノックアウトされてしまいますが、続いてフェイドインしてくる
一転してリズミックな6/4拍子のフレーズがとんでもないことこの上ない。ちなみにこの6/4の
パートはモールス信号をイメージしたとか。そして普通の四拍子に移ってからもフィルのプレイは
圧倒的です。おそらく80年代以降のフィルしか知らない方たちは” フィルってこんなに
ドラム巧かったんだ ” と思う事でしょう。そうです、彼は凄腕のドラマーなのです。速く細かく動く手足、極小のピアニッシモから特大のフォルテシモまで叩き分けるダイナミクスレンジの広さ、
フロントのプレイに対して打てば響くといった様な見事なレスポンス及びそのセンスなど、
当時のイギリスにおいてもトップクラスの技巧・センスを誇るドラマーでした。

フィルがジェネシスのメインヴォーカルを担当するようになったのは当然の如くピーター脱退後、
アルバムで言えば76年の「A Trick of the Tail」からですが、実はピーター在籍時にもリードヴォーカルを
取っています。加入後初の作品「Nursery Cryme(怪奇骨董音楽箱)」(71年)に収録された
「For Absent Friends」にて既にその歌声を披露しており、うっかりするとピーターかと
思ってしまう程に二人の声質は似ています。
上は73年の名作「Selling England by the Pound(月影の騎士)」より「More Fool Me」。
本作からジェネシスの音楽性はより叙情味を増し甘いものへと変化していきましたが、
本曲は収録曲中最も甘くハートウォーミングな楽曲。多分ピーターが歌っていたならその少しくぐもった
鼻にかかる声にてクセのあるものになっていたのでしょうが、これはフィルが歌って大正解。
あまり取り上げられる事がない楽曲ですが、フィルの歌唱において隠れた良曲です。

フィルの名声を世界的なものにしたのは言うまでもなく初ソロアルバム「Face Value(夜の囁き)」及び
本作からの1stシングル「In the Air Tonight」(81年)です。参考までにシングルの各国における
チャートアクションを列挙すると、独・仏・蘭・スウェーデン・スイス・オーストリア・NZでNo.1、
本国英と加で2位、豪で3位という特大ヒットを記録。アルバムも前述の国々及び米においても1位から
7位というこれまたトンデモないもの。
「In the Air Tonight」は一聴するとお世辞にも耳馴染みの良いポップソングではありません。
しかしながらこれほどの大ヒットとなったのは、それまでの徐々に高まりつつあったジェネシス人気の
流れにおける上で満を持してのソロデビューという効果があったのは否めませんが、やはり本曲の
特にサウンド面における先進性がアンテナの鋭い層へ訴えかけたのだと思います。
サウンド、言い替えると音色面という事ではピーター・ガブリエル回でも言及したドラムにおける
ゲートリバーブについて触れる事が必須ですけれども、今回もだいぶ長くなってしまったので
その点については次回以降で折に触れ述べてみたいと思います。

今回の最後は「夜の囁き」におけるエンディング曲である「Tomorrow Never Knows」。
言うまでもなくビートルズナンバーですが、あまりにも多くの要素が詰め込まれています。
実はフィルは幼少期に子役として活動しており、映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』
にエキストラ出演しています(ほんのちょっと映っている程度らしいですが)。
フィルのドラミングには間違いなくリンゴ・スターのエッセンスが反映されています(それは本曲のみならず
全てにおけるドラミングにて)。「Tomorrow Never Knows」ではイントロにおいて無機質な
リズムマシンでフェイドインしてきたかと思えば、いきなりエコーの効いたハイピッチなドラム
(特にタムタム)が始まります。勿論原曲におけるリンゴのプレイ・音色を尊重しての事でしょう。
テクニックという点では大変失礼ながらフィルの方がリンゴよりも圧倒的に勝っていますが、
そのフレーズのセンスや先進的なアイデアという点において、二人には近いものを感じるのです。

続きはまた次回にて。

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